DVD簡易分光器の改良 (2) - 構造・作り方
DVD簡易分光器の自作の方法は一度記事にしました(「簡易分光器の作り方と反省点 - DVD-ROM使用」)今回はその反省をもとに新たに作ってみることにしました。
次のような構造とします。オレンジ色の線が回折格子(DVD)の位置です。
最初の記事ではスリットの前後にレンズを入れることができるようにしていたのですが、これは現在(2016年6月)使っていないので図を差し替えました。
レンズの使用は調整がたいへんであんまり効果がなかったので上のようなシンプルな形にしました。
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改良点は以下のとおりです。
1. “骨格”はアクリル板やボルトで作りスリットと回折格子(DVD)の位置関係を一定に保ちます。
2. さらにアクリル板に40.5mmレンズ用フィルターを固定し、PENTAX Qのレンズを(つまりPENTAX Qを)取り付けられるようにします。これによってスリット=回折格子=カメラの位置関係を一定に保つことができます。面倒なカメラの位置調整をしなくて済むようになりますし、撮影した画像から波長を読み取るのも楽になります。
3. スリット部分は取り外し可能にします。外径21mm内径18mmのパイプはアクリル板に固定しておきます。ここに外径18mm内径15mmのパイプを差し込んで使います。
これによって内側のパイプを交換することによりスリットの幅を変えたり距離を調整したりと言ったことが簡単にできるようになります。
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位置関係はまず次のように作ってみるつもりです。おそらく特に調整しなくてもこのまま使えると思います。
400nm~700nmを観測(撮影)対象範囲とします。
(理由はそのうち記事にしますが)輝線/吸収線の画像上の位置は波長と線形の関係にあると考えて差し支えないので画像の中心に550nmがくるように位置を決めます。
まず入射光とDVDのなす角θ1ですが「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」 によれば10~30度が適切とのことですので20度にします。これは下側のアクリル板とDVDのなす角でもあります。
回折格子の
nλ = d * (cosθ1 - cosθ2)}
の関係式から(n=1とすれば) θ2=78.6度となります。
したがって入射光とカメラの光軸がなす角は81.4度ということになります。つまり上側のアクリル板と下側のアクリル板のなす各を8.6度とすればいいことになります。
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アクリル板にレンズ用フィルターを固定する、と書きましたが具体的にはこうしています。
製作途中の写真です。
アクリル板に穴をあけます。これがけっこうたいへんです。
電動ドリル、ヤスリ、ニッパー、おもちゃのルーターを動員してフィルター外径ぴったりの穴にします。ルーターのビットを一つダメにしてしまいました (^^;;
不測の事態を避けるためフィルターからいったんレンズ(ガラス)を外します。
フィルターをレンズにねじ込んだとき方向が合うように位置を確認しておきます。
アクリル板の穴の縁に接着剤(エポキシ系を使いましたが適切ではないような気がします)を塗りフィルターを穴に打ち込みます。
フィルターにガラスをつけるかどうかは趣味なりポリシーで決めます。
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パイプと書いていますが、じつはこれはプリンタ用紙を丸めてのりづけして作っています。さほど力がかかるところではありませんし、好きな径のものを作れるのでこうしました。
巻き始めの部分はつや消しの黒をスプレーしておきます。巻き終わったあとスプレーするのは面倒ですから。
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まとめ記事
「DVD簡易分光器の自作とトラブルシューティング」
「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による」
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関連
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「ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し」
「Hαフィルターを使わずにHα写真を撮る方法」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」
「Welcome to my homepage. - DVD分光器」
「星は空の彼方、月よりも遠く
- 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
- 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
「ラジオペンチ - DVDのメディアで簡易分光器を作る-その1」
DVDから回折格子の切り出し方
「ラジオペンチ
- DVDのメディアで簡易分光器を作る-その2、(フラウンホーファー線が何とか見えた)」
スリットの作り方
「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方」
「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
「国立天文台 - 分光宇宙アルバム」
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」
「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位」
「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識」
「岩崎電気 - ランプ光源情報」
「ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ」
国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014
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