低圧ナトリウムランプのスペクトル - 自作DVD分光器
ナトリウムランプと言ってもいくつか種類がありそうです(「Wikipedia - ナトリウムランプ」)
実際夜の街にでかけて分光写真をいろいろ撮ってきたらナトリウムランプらしき街灯のスペクトルにもいろいろなのがありました(もう一つのナトリウムランプについては「D線が存在しない高圧ナトリウムランプのスペクトル - DVD簡易分光器」にあります)
今回はいかにもそれらしい(低圧ナトリウムランプと思われる)街灯のスペクトルです。使った分光器は「簡易分光器の作り方と反省点 - DVD-ROM使用」に書いたものです。
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その後色解像度が高いスペクトル画像を撮ったところこのランプは高圧ナトリウムランプであることがわかりました。すみません m(._.)m
(「ナトリウムランプのスペクトルの詳細 - 改良版DVD簡易分光器」より)
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まず写真から
ひときわ明るいオレンジ色の輝線があります。これはD線と言われるものですが、ナトリウム原子の基底状態から次に高いエネルギー状態から基底状態への遷移に伴う発光だそうです。この“次に高いエネルギー状態”というのは接近した二つのエネルギー準位からなっているため実際はD線はD1、D2という二つの輝線からなります。ただこの二つの輝線の波長の差は0.6nmしかなく、さすがに私の簡易分光器での分離はムリです。
(参考「13 原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位 -」)
上の写真をよく見るとオレンジ色の線が二つの輝線からなっていることがわかりますが、これはD1、D2ではなくD線とそれとは別のもう一つの輝線です。
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この後の手順は「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル」と同じでまず上の画像を波長とRGB値のグラフにし、理科年表などで輝線の波長を調べ位置と波長の関係を求めます。
波長と画像上の位置はだいたい直線になるのですが、使用した輝線についてこの波長と位置の関係がなめらかになっているかも確認しておきます。
画像上の位置と波長の関係はグラフの右上の式を見るとわかるように
λ = 0.1679 * y + 233.18
となっていますが、位置から波長への変換のときはこれを
λ= 0.1679 * ( y - 1499.5 ) + 484.9
と変形して使います。なぜこうするかというと、今は分光器とカメラの位置関係は固定してあるので本来は上の式の係数は一定しているはずですが実際はそうならないからです。
使用しているカメラがPENTAX Q7 + 01 STANDARD PRIME でピントが固定できない__マニュアルでピントを固定しても電源をオフにするとリセットされてしまう__ので
y = ax + b
の形で近似するとピントを調整し直したときaもbも変化してしまいます。一方
y = a*(x - y0 ) + b1
の形だと変化するのはaだけになります(要するに画面中央y=y0の位置の波長b1はピントを調整しても変わらない)
波長がわかっている輝線があればその波長が一致するようなaを探すだけで済むからです。つまり波長がわかっている輝線が一つありさえすれば画像上の位置と波長の関係を決めることができます。
実際は分光器とカメラの位置関係を完全に固定しきれていないのでbも変化する可能性があり最終的にはa、b両方を求めbが変化していないか確かめるのですが。
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結果
ナトリウムの輝線のリストと一致するものが4箇所(6本分)ありました。
オレンジの輝線が二つに別れていましたが、これはD線と586nmくらいの別の輝線のようです。ナトリウムと関係あるのかないのかもよくわかりません。
なお、“光の強さ”はこれまでと計算方法を変えています。どう計算するのが妥当なのかこれもよくわかりません。試行錯誤中ですのでこれについてそのうち記事にするつもりです。
(これまでは“輝度”の計算式を使っていたのですが、あれは人間の感覚を重視したやり方で物理的な強度とは違うと思ったからです)
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まとめ記事 「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による」
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関連
「簡易分光器の作り方と反省点 - DVD-ROM使用」
「DVD簡易分光器の改良 (1)」
「DVD簡易分光器の改良 (2) - 構造・作り方 」
「DVD簡易分光器の改良 (3) - 仮組立 」
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「Hαフィルターを使わずにHα写真を撮る方法」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」
「Welcome to my homepage. - DVD分光器」
「星は空の彼方、月よりも遠く
- 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
- 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方」
「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」
「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位」
「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識」
「岩崎電気 - ランプ光源情報」
「ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ」
国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014
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