DVD簡易分光器の改良 (1)
今使っているDVD簡易分光器は下図のAの形になっています。
色分解能を上げるためにはまずスリットを狭くする必要があります。
また回折格子の分解能は「色分解能 (3)」 に書いたように回折格子の格子の密度と回折格子の大きさで決まります。もっともこれは回折格子に入射する光が平行であるということが前提です。簡易分光器では入射光が平行ではありません。平行な(=平行に近い)状態にするためにはスリットと回折格子の距離を大きくとる必要があります。
この、スリットを狭くする、スリットを遠くにおく、というのはいずれもカメラに届く光量が減少する方に働き、とても使いづらくなります。
そこでB.にあるようにレンズを使うことにしました。スリットを狭くすることによる光量の不足はL1で補い、スリットを遠くに配置することによる光量の不足はL2で補います。
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レンズとしてはカメラのレンズや天体望遠鏡の対物レンズがあるのですが、あくまで簡易分光器ですからこういうものは使いたくありません。もって歩けることが絶対の条件です。
あちこち探していたら組み立て望遠鏡の接眼鏡がありました。これは14mm径のプラスチックレンズが使われています。コンパクトに作れそうです。L1にはf=15mm、L2にはf=30mmのレンズを使ってみることにしました。
製作記事を書こうと思ったのですが、実際やってみるといろいろ問題があってこう作れば確実に使えるというのがまだ書けません。
ここではテスト的に作った改良型DVD分光器の測定結果だけ示します。
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ネオン管で効果を見てみました。私の使っているネオン管はあんまり光量がなく条件的にはシビアです。
先日の「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル」にあるスペクトル
“改良版DVD分光器”で撮ったスペクトル
(さらに色解像度の高い画像が「ナトリウム炎色反応のスペクトル(二つのD線)」にあります)
色解像度は改善しておりこれまで一つに見えていた輝線がじつは二つの輝線からなっているものがあることがわかります。またスリット幅は0.1mm程度になっているにもかかわらず露出的にはEVで2くらい画像が明るくなっています。
分光分布を比較してみました。
これまでの結果=なだらかな赤い点線=にくらべ今回の結果=青い実線=の方がはるかに色解像度が高いことがわかります。赤い矢印で示した輝線は今回の画像で判別できるようになったものです。
また「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々 - ネオンランプと水銀ランプ」 と見比べると580nm~650nmあたりの輝線はほぼとらえられてることがわかります。
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参考
「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」
「Welcome to my homepage. - DVD分光器」
「星は空の彼方、月よりも遠く
- 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
- 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方」
「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
「国立天文台 - 分光宇宙アルバム」
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」
「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位」
「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識」
「岩崎電気 - ランプ光源情報」
「ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ」
国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014
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コメント
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だんだん本格的になってきましたね♪
分解能を上げるにはどうしてもレンズを使うようです。
あたしも以前から作ってみたいと思いつつ未だに腰が上がりません^^;;
続きを楽しみにしてますよぉ(^_-)-☆
投稿: クリちゃん | 2016年5月22日 (日) 15時12分
はい、“理屈”ではレンズ(コリメーター)を使った方が色解像度がいいに決まっているのですが、作り方・使い方が悪いとかえって解像度が悪化したりします。
本格的というかだんだん本気になってきたのですが、言葉を変えると意地になってきたということかもしれません (^^;;
最終目標は天体のスペクトルを調べドップラー効果やゼーマン効果を検出することでしょうか。いつになるかわかりませんし永久にできないのかもしれませんが...
投稿: セッピーナ | 2016年5月22日 (日) 21時07分
いきなりコメンント入れてすみません、最近読者になった者です。
いやすごい分解能になってきましたね。これはやってみたいです。
光のスペクトル分析は天文はもちろん量子力学までつながるロマン、いや真理を追究した偉人たちが
通った道筋ですよね。これはぜひ自分でもやってみたいです。
投稿: ラジオペンチ | 2016年5月22日 (日) 22時20分
いえいえ、コメントありがとうございます m(._.)m
当面の目標はナトリウムD線の0.6nm離れたD1、D2の分離でこれはがんばればどうにかなるような気がしてきました。
おっしゃるとおりスペクトルの観測は遠い宇宙で起きていることや原子の中で起きていることを知る手段なんですが、精密な測定は思っていたよりずっとハードルが高いです。
以前 ラジオペンチさんが書かれていたHDDでポータブル赤道儀を作る話は“目からうろこ”で“あ、こういう手があったんだ”と驚きましたが、あれはスペクトルの観測でも応用できるんじゃないかと考えています。
投稿: セッピーナ | 2016年5月22日 (日) 23時58分