DVD簡易分光器で見るフラウンホーファー線(太陽光のスペクトル)
今「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」 を参考にして作ったDVDを使った簡易分光器でいろんなもののスペクトルを調べようとしているのですが、同じ方針の製作記事「Welcome to my homepage. - DVD分光器」 によればこれでもフラウンホーファー線が見えるらしいです。そこでさっそく試してみました。
なおタイトルには太陽光と書いていますが、実際は日陰で空からの光を分光しています。散乱した光でもないもの(暗線)が復活するとは思えないのでこれでフラウンホーファー線を見るだけなら問題ないはずです。
それから「色分解能 (3)」に書いた理屈で言えばDVDを回折格子代わりに使ってもちゃんと作ればそれなりの色分解能が得られるように思えます。解像度、コントラスト向上のため簡易分光器を改良する、とか書いていましたが、それよりちゃんとした分光器を作った方がいいような気もしてきました。幸い使っていない天体望遠鏡のレンズが何個かありますので....
この記事の画像の質があんまりよくないのはいろいろ原因があるのですが、特に回折格子にDVD-ROMを使っていたためのようです。
「フラウンホーファー線の画像が画期的に改善! - 太陽光のスペクトル」
DVD-Rに変えた上でいろいろ改良を重ねたら見違えるようなフラウンホーファー線の写真が撮れるようになりました。
「D3線はいずこ? - 簡易分光器の限界に挑む」
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写真を撮ったらこうなりました。
教科書にあるような立派なものではありませんが、いくつか暗線らしきものが見えています。比較的はっきり見えているものに1.~4.の番号を振ってあります。
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代表的なフラウンホーファー線、つまり大文字のアルファベットがついている暗線でこの領域にあるものを割り当てると
1. ==> G
2. ==> F
3. ==> E
4. ==> D
ということになります。画像上の位置と各暗線の波長を調べてグラフにしてみました。
明らかに3.=Eのところがヘンです。このE線の位置がおかしいというのは以前
「星は空の彼方、月よりも遠く - 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
で拝見したことがあります。となると単に位置を測り間違ったとかではなく何か理由があるはずです。
他の暗線の位置から考えると、この位置に暗線があればその波長は520nm程度であり、またE線は1850ピクセルくらいの位置にあるはずです。
そこで写真をもう一度チェックしてみます。
確かに1860ピクセルあたりに暗線があります。きっとE線はこれなんでしょう。
そして調べてみたら3.の位置つまり520nmあたりにもフラウンホーファー線はありました。小文字のb.というのがそれです(これは実際には複数の暗線なのですが、この分解能では分離することはできないはずです)
以上をもとに改めてグラフを作るとこうなります。
こんどは五つの点がきれいに並んでいます。
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上の画像から波長に対する輝度のグラフを作ってみました。
画像を見るとうっすらとでも確かに暗線があるのがわかるのですが、グラフではちょっとしたディップ(スペクトルがx軸に平行に近いとき)か段差(スペクトルが上昇あるいは下降しているとき)にすぎません。
暗線の位置を調べたらディップ(段差)があるのですが、ディップ(段差)から暗線のリストを作るというのはムリっぽい気がします。特にC.はグラフに段差のようなものがあるところ波長が一致してはいるのですが、画像を見ても暗線があるようには見えませんでした。
暗線ですから簡易分光器で水銀灯や(これから記事を書く予定の)ネオン管の輝線のようなシャープなものを期待するのは間違っているような気もします。
と書いたのですが。
「廊下のむし探検 - カメラの波長感度 つづき」
を拝見するとけっこういい感じに写っています。コリメーターを作ろうと思っていたのですが、スリットの位置を変更すればずっと解像度をあげられるかもしれません。
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その後かなり改善しました。
(「フラウンホーファー線の画像が画期的に改善! - 太陽光のスペクトル」より)
(「太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線」より)
(「DVD簡易分光器のスリット間隔とフラウンホーファー線の見え方の関係」より)
前の記事 「DVDで作る簡易分光器 - 水銀灯の分光スペクトル」
次の記事 「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル」
まとめ記事
「簡易分光器 - 作り方・使い方のまとめとリンク集」
「DVD簡易分光器の自作とトラブルシューティング」
「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による」
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関連
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「DVD簡易分光器の改良 (1)」
「DVD簡易分光器の改良 (2) - 構造・作り方 」
「DVD簡易分光器の改良 (3) - 仮組立 」
「DVD簡易分光器の改良 (4) - 組み立て」
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「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」
「Welcome to my homepage. - DVD分光器」
「星は空の彼方、月よりも遠く
- 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
- 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
「ラジオペンチ - DVDのメディアで簡易分光器を作る-その1」
DVDから回折格子の切り出し方
「ラジオペンチ
- DVDのメディアで簡易分光器を作る-その2、(フラウンホーファー線が何とか見えた)」
スリットの作り方
「DVDのメディアで簡易分光器を作る-その3、(まとめ)」
「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方」
「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
「国立天文台 - 分光宇宙アルバム」
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」
「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位」
「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識」
「岩崎電気 - ランプ光源情報」
「ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ」
国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014
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投稿: 並木 伸爾 | 2019年4月13日 (土) 10時44分
並木伸爾さま
コメントありがとうございます。
(PCで見たときの)記事の上の部分の注記にあるとおり、リンク・引用等自由にしていただいてけっこうです。
記事をちょっと拝見したのですが、Heの輝線を見るという試みにはとても興味があります。
フラウンホーファー線の中にHeの吸収線があるという話にさんざん振り回されたので (笑)
投稿: セッピーナ | 2019年4月13日 (土) 22時38分