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2016年5月27日 (金)

簡易分光器にDVD-ROMを使うとゴーストが出る理由

簡易分光器を作り色分解能を追い求めているうちにヘンな現象に遭遇したという話をDVD簡易分光器の改良 (3) - 仮組立 に書きました。要するにスペクトルのゴーストみたいなのが現れるのです。
Imgp2872e600

a、bが水銀の輝線577nmと579.1nmで、c、d.がそのゴーストらしきものです。

aとbは2.1nmの差があるのですが、画像上は13~14ピクセルの差になっています。またa、bとそれらのゴースト(?)は4~5ピクセルの差があります。

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これは回折格子に使っていたDVD-ROMをDVD-Rに取り替えたらあっさり解消しました。

解決したからいいのですが、なぜDVD-ROMだったらそうなるかというのが気になります。

このことについてラジオペンチさんから次のようなコメントをいただきました。

すばらしい分解能になってきましたね。

ところで、ゴーストが出ていた件、私もTT@北海道さんがコメントされたように、媒体円盤の反射が原因かと思っていました。

ところが、DVD-Rでゴーストが出なくなったということから考えると、DVD-ROMの二層の記録層の影響でゴーストが出ていた、いう気がします。2層のDVD-ROMの層間隔は55±15μm(DVD-R DLだと25±5μm)らしいので、もし可能なら、ゴーストの位置が層間寸法から予想される値と矛盾しないか計算で確認してはいかがでしょう。とは言っても層間の物質の屈折率が判らないのですが、おおざっぱに値が一致すれば、少し安心できると思います。

確かにそれだったらあり得るかもしれません。仮にそうだとしたらどんな結果になるのか、またそれは実際の結果と合っているのかというのを考えてみました。

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簡易分光器についてふつうの回折格子を使った分光器のような説明をしてあるのをよく見かけるのですが、それはあんまり適切じゃないように思います。簡易分光器の場合回折格子に入射する光は平行光線でないので単一の波長での考察はともかく広い波長範囲に関してはちょっと違ってきそうです。

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簡易分光器を次のような図として考えます。
Photo

次のように仮定します。

  (大きさが無視できる)スリットあるいはピンホールが(x0,y0)にある。
  カメラ(のレンズの中心)はx軸上(xc,0)の位置にある。
  回折格子はy=ax+bの直線上に置かれている。
  レンズの焦点距離(正確にはレンズの中心とセンサーの距離)はfである。

また

  スリット(ピンホール)から回折格子に下ろした垂線の長さをh1
  レンズの中心から回折格子に下ろした垂線の長さをh2
  スリット(ピンホール)から回折格子に反射してレンズの中心に向かう光路について
    スリットから反射点までの距離をL1、反射点からレンズの中心までの距離をL2

とします。

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回折格子の格子間隔をdとしたとき波長λの回折光については

  λ = d * ( cosθ1 - cosθ2 )

という関係が成り立ちます。

あるxに対して y=ax+b から回折格子上の位置 (x,y) が決まります。(x,y)が決まればL1,L2つまりθ1、θ2が求まります。

上の関係式とθ1、θ2から(x,y)で反射している光の波長が決まります。もちろん(x,y)からそのセンサー上の位置pxも求まります。

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xに対する波長λとセンサー上の位置pyが決まるのでxを変化させながら計算した波長λとセンサー上の位置pxから波長λとセンサー上の位置pxの関係を知ることができます。

計算例
Photo_2

実際の位置関係をもとに撮影した画像を考慮しながらパラメータを決めて計算した結果です。

波長1nmに対して6ピクセルくらい変化していますから、最初の画像と一致する結果が得られています。というかそうなるように実際の配置を考慮しながらパラメータが決められているだけですが。

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ここで回折格子が左に(下に)移動したとします。
1


これは回折がDVD-ROMの第一層ではなく第二層で起きたことを想定しています。回折格子の位置の変化はy=ax+bのbの値の変化に対応します(回折格子の位置の変化=bの値の変化、ではないです)

第一層と第二層の距離が0.055mmとしたときの結果です。

1_2

同じ波長でも画像上では2ピクセルほどyが大きい方につまり本来の位置より下にスペクトルが現れることがわかります。またゴーストは画像では上側にでているので第一層の反射の方がゴースト第二層での反射(回折)の方が強いということのようです。

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実際はゴーストは4~5ピクセルほど離れたところに出現しており上の結果とは異なります。
この理由なのですが、DVD-ROMの表面をカバーしているプラスチック(ポリカーボネート?)による屈折が影響しているのかもしれません。

屈折を考慮して計算すればいいのです、もうここまでで疲れきってしまって... (^^;;

なお第一層と第二層で反射(回折)するとなると第一層の反射と第二層の反射の干渉は考えなくていいのかという話になりますが、二つの層の間の距離を考えるとふつうの光源(つまりコヒーレントでない場合)はそれは考えないでいいような気がします。逆にコヒーレントだったら(つまり半導体レーザーみたいな光源だったら)何かそれ特有の現象が起きるようにも思えます。

このあたりは、この記事に書いた“理論”が正しいかどうかの検証に使えるかもしれません。

ゴーストのなくなった三波長型蛍光灯のスペクトル
Imgp766712001000


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  「
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参考
  「
国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件
  
Welcome to my homepage. - DVD分光器
  「星は空の彼方、月よりも遠く
    - 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
    - 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)

  「
廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
  「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方

  「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
  「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~

  「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位
  「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識
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岩崎電気 - ランプ光源情報
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ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ

  国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014

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コメント

中間層の膜厚が55μmというのは物理長でしょうから、光学長はそれより短いはず。ならば、屈折率=1で計算したゴーストの位置は実際より遠くになるはず、と予想していたのですが、逆の結果ですか、

なかなか手ごわいですね。

せっかくですから屈折率を考慮したものもやってみようと思っていますが、その前に今回の計算が間違ってたないかも確かめておきます。

ついでに今のスリットの幅0.1mmから色解像度がどの程度になるかやってみたらだいたい今の画像と同じくらいになりました。
回折格子自体の解像度にはまだ余力があるはずなので、もう一段スリット幅をせばめて結果がどうなるかやってみたくなっています。

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