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2016年6月12日 (日)

簡易分光器 - スリットの間隔の決め方と作り方

DVDのメディアで簡易分光器を作る-その2、(フラウンホーファー線が何とか見えた)- コメント簡易分光器は一言でいうとスリットと回折格子でできています。回折格子についてはこれまで何度も記事にしており最近では簡易分光器の作り方 - 回折格子をどうするに書きました。

そこで今回はスリットの話を以下あれこれ書くのですが、スリットに関しては完璧と思われるものを製作されている方がいらっしゃいます。

  「ラジオペンチ
    - 
DVDのメディアで簡易分光器を作る-その2、(フラウンホーファー線が何とか見えた)

これから簡易分光器を作っている・これから作ろうという方はぜひ御覧ください。私も真似して作りなおそうかと思っています。 <== 実際作りなおしました。2016年6月17日以後の記事はこの方法で作りなおしたスリットによるものです。

上のラジオペンチ さんの記事にあるコメント(というかコメ返)もスリットの作り方について参考になると思います。

  「ラジオペンチ
    -  DVDのメディアで簡易分光器を作る-その2、(フラウンホーファー線が何とか見えた)- コメント


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それからちょっと意外な作り方もありました。
  「天文月報 - 2006年10月 - 天球儀 - コンパクトディスクを使った簡易分光器の製作
  天体望遠鏡でピントをあわせるとき使うバーティノフマスクを思い出します。

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この部分の内容はちょっと不正確なようです。試しにやってみたら色分解能300が必要な577.0nmと579.1nmをN=200くらいで余裕で分離できました (^^;;
実験結果をまとめ、これまでの考察(?)を再検討した上で記事にする予定です。


N値と色分解能の関係を実測してみました。

  
DVD簡易分光器の色分解能を蛍光灯の輝線で実測してみた

色分解能 ≒ N値 * 2  と考えればいいようです。以下これに合わせて書き直しました。

またスリット間隔やスリット・回折格子間の距離を変えたとき見え方がどう変化するかはフラウンホーファー線を例に実験した例を記事にしました。


  「
DVD簡易分光器のスリット間隔とフラウンホーファー線の見え方の関係

スリットを作る前にスリットの間隔(スリット高、スリット幅)をどのくらいにしたらいいかというのが問題ですが、極端な作り方をしない場合スリットから回折格子までの距離 L をスリット間隔 s で割った数値 N = L/s が重要です。色分解能は概ね N に比例し、 経験的にはNのだいたい2倍になります。

この記事は回折格子(DVD)に対する入射角が20度くらいであるという前提で書いているのですが、入射角が変化するとそれに伴ってLが変化したような効果が生じるので注意が必要です。

  「
CD/DVD簡易分光器設計のポイント

例えば蛍光灯の水銀の輝線577.0nmと579.1nmは2.1nm離れていますのでこれを分離して見るためには色分解能は少なくとも 580/2≒300 くらい必要になります。とするとN > 150 くらいに作っておくのが無難です(Nと色分解能の関係はどういうカメラを使うかなどにも関係しますのであくまで目安です)

N=150 となると L=75mms=0.5mmとかL=150mms=1mm とかいろいろ組み合わせがありますが、s を小さくするよりL を大きめにした方が安全だと思います。私も簡易分光器をたくさん作ったわけでもないので断言はできませんが、カメラでの撮影のしやすさとか回折格子(DVDの記録面)をどれだけ有効に利用できるかというような理屈からはそうなります。

この計算だとナトリウムのD線を分離しようと思うとN > 500ということになりますが、こういう工作に慣れていない方は最初はN=200~300から初めてどういう感じか(どういう問題があるか)を確かめそれから徐々にN を大きくしていった方が失敗が少ないと思います。

N=2000N=3000 とかなると別世界___フラウンホーファー線のb2とb4が分離できる、蛍光物質の発光にまぎれて見えなかった蛍光灯の水銀:491.6nmの輝線の位置がわかる、など___が見えてきますが、こういう値にして使い物になるようにするには集光用のレンズを入れるとか、フォーカスをあわせる方法を準備しておくなどそれなりの工夫が必要でした。

比較的高い色分解能で撮った480nm~540nmにあるフラウンホーファー線
(この画像はレンズは使わず、アルミ箔で作ったスリット、DVD-Rを二枚におろして作った回折格子、PENTAX Q+06 TELEPHOTO ZOOMで撮影したものです)
Imgp8670m56d81350new3

堂々としたF線に対し、E線がじつは弱々しい吸収線であることがわかります。

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自分で作るまでにとうぜんググッてみなさんどういう作り方をされているか調べるわけですが、紙あるいはアルミホイルにナイフで切り込みを入れるという方法が多いようです。

私も最初はそういう方法を採っていたのですが、やってるとどうしてももっと狭くもっと狭くという気持ちが強くなります。紙やアルミホイルだと精度よくスリットの間隔を狭くしていくというのはなかなか難しそうです。

そこでまずやったのはカッターナイフの刃を使う方法です。カッターナイフを折ったもの2枚を向かい合わせて配置する方法です。簡易分光器の作り方と反省点 - DVD-ROM使用の頃はこの方法を採っていました。この記事にある写真にもカッターナイフの刃が写っています。

そのあと簡易分光器の改良を始めたのですが、これは光路をパイプの中に作ろうとしているのでカッターナイフの刃だと大きすぎてパイプの中に入りません。

しようがないのでプラスチック版の端を斜めに削り向かい合わせて配置するという方法にしました。

Slit_01

こういうのを間隔を調整しながら穴を開けた紙の上に貼り付けます。
絵が下手なので左右対称になっていませんが、実際のエッジもこんなものです。

ところで余談ですが、これまで上の図のエッジの間隔のことを“スリットの幅”と書いていました。ラジオペンチ - DVDのメディアで簡易分光器を作る-その1を拝見すると“スリットの高さ”と書いてあります。確かに幅というのは横幅のことですからまずそうです。
これからは“スリットの高さ”と書こうと思ったのですが統一がとれてなくて紛らわしくなりそうなので当面スリットの間隔と書くことにしました。

 

--------
 
さて上のプラ板製のスリットはしばらく使ったのですが、もっと間隔を狭めたくなりました。
いったん台になっている紙からはがして貼り直したりしたのですがなかなか狭まりません。

そこで次のような方法をとることにしました。

まずスリットにアルミホイルを通します。
Slit_02

緑色がアルミホイルのつもりです。これで右側のエッジを覆います。
Slit_03


次に左側のエッジも同様にします。
Slit_04


台所にあったアルミホイルは厚さ11μmと書いてありましたから、これで少なくとも0.022mmは狭くなったはずです。必要に応じて(?)これを繰り返します。もちろん片側だけでもかまいません。

せっかくつや消しの黒を塗ったプラ板が今は光輝いています (^^;;

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でけっきょくスリットの間隔は今どのくらいあるのか?
測りようがないので、このところ記事では0.1mm以下とぼかしてきたのですが、それじゃまずいと思って今日写真を撮ってみました。

Imgp347678_

二枚の写真をいっしょにしたらわかりにくくなりましたが、上の方は単に写真を撮ったもの、下の方は下から照明を当てて撮ったものです。

上のほうの黒いところと下のほうの白いところがだいたい一致していますので、ここがスリットの間隙と見てよさそうです。となると想像してた(意図してた)よりぜんぜん精度が出てなさそうです。

スリットに通してある上側のアルミホイルの幅は3mmちょうどでした。それがこの写真では933ピクセルあります。スリットの右側から中央にかけて幅が広くなっていく部分の途中は13ピクセルでした。

  3.0 * 13 / 993 ≒ 0.042

ですからこの部分で0.04mmくらいということになります。

これからは“スリット間隔(スリット高さ) 1/20mm程度” と書くことにしたいと思います。

スリットの形は輝線の写り方を見るとなんとなくわかります。
Imgp8429m52d4na
(ろうそくの連続光とナトリウムD線)

確かに両端が広がっている感じですが、まんなかだけ使えばいいわけで (^^;;


--------

スリットの間隔が大きいうちは狭くすれば狭くするほど色分解能が上がっていきます。ただ狭くすればいくらでも色分解能が上がるかというとそれは違うということを何度か書きました。それは天体望遠鏡が倍率を上げても見え方がよくならないのといっしょ、と。

これまではスリットの傾きをちょっと変えるだけでスペクトル像が大きく変化していました。スリットの傾きをずいぶん慎重に調整したものです。

最近なんとなくスリットの傾きの影響が小さくなってきたように思います。即断はできませんがそろそろ色分解能がスリット間隔ではなく回折格子の方で決まる領域に入りつつあるのかもしれません。

<=== ここのところは早とちりかもしれません。スリット高(間隔)やスリットと回折格子の位置関係以外の要因で色分解能が変化しているように思えてきたので現在原因を追求中です。
ただ以下に書くことはいつか必ず問題になってくることなのでそのままにしておきます。


DVDの記録面の幅は30mm以上40mmありますからトラックピッチを0.74μmとすると回折格子としての理論的な色分解能の限界は40000 54000程度になるはずです(色分解能 (3)
もし今の色分解能2000から3000が限界だとすると簡易分光器の場合回折格子の入射光が平行でなくDVDの記録面の幅を有効に使えていないことが原因ではないでしょうか。

    <== と書いたのですが、すでに色分解能5000が達成できています(2016.06.18)

となるとスリット間隔を狭くするのはやめて回折格子とスリットの間の距離を大きくするというのが効果あるのかもしれません。距離を大きくすると回折格子の入射光は平行に近づきますから。もちろん理想はコリメーターですが、これは趣味のレベルではなかなかむずかしそうです。

DVDの記録面が回折格子としてどれほど信頼できるものなのかという問題もあります。

このあたりはちゃんと理論的な検討をしてから方針を決めた方がいいとは思うのですが、(私の学力では)けっこうやっかいです。たぶん試行錯誤の方向に向かうと思います。



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まとめ記事

  「簡易分光器 - 作り方・使い方のまとめとリンク集

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参考
  「
国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件
  
Welcome to my homepage. - DVD分光器
  「星は空の彼方、月よりも遠く
    - 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
    - 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)

  「ラジオペンチ - DVDのメディアで簡易分光器を作る-その1
    DVDから回折格子の切り出し方

  「ラジオペンチ
    - 
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    スリットの作り方
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  「国立天文台 - 分光宇宙アルバム
  「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~

  「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位
  「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識
  「
岩崎電気 - ランプ光源情報
  「
ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ

  国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014

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今晩は、セッピンーナさんの記事を参考にさせていただいたおかげで、フラウンホーファー線が見えるようになってきました。

http://radiopench.blog96.fc2.com/blog-entry-672.html

期せずして、こちらの記事と同じくスリットの作り方なども書いてます。

進捗が早いのでびっくりしています。フラウンホーファー線の画像も完璧ですね。
じつはこの記事にはどうも事実誤認があるようなので訂正していこうと思っているのですがラジオペンチさんの記事も紹介せていただきたいと思います。

今色分解能をいろいろ条件を変えて調べなおしているのですが、5000くらいは行けてるように見えるケースもあります。それをフラウンホーファー線の撮影にうまく活かせておらず、どうも加工というか工作の精度の悪さ、作りの雑さが原因のようです。今のをベースに改良して行くか新たに作りなおすか悩んでいるところです。

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