DVD簡易分光器の色分解能を岡山天体物理観測所と比較する
またまた太陽光のスペクトル画像ですが、これはこれまでと違ってちょっと気合が入っています。
8枚の画像をスタックしてあります。もっとも天体の写真と違ってスペクトル画像のスタックは何も考えることがないので簡単なものなんですが...
なおこの画像は“改良版DVD簡易分光器”によるものですがレンズは使っていません。スリットだけを使って撮ったものです。
上の画像を前回記事に書いたマカリで数値化(グラフ化)してみます。
けっこう細かい輝度の変動があります。上の画像と見比べてみるとこの中にはけっこう暗線による輝度の低下を示すものも多いように思われます。一方ノイズがどれくらい混じっているかも気になります。
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」で約600個の恒星のスペクトルの数値データが公開されています。この中からスペクトル型がG3Vである16 Cyg Bのデータを上のグラフに追加してみました。
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」のデータは全波長域に渡るものではなく赤色領域と青色領域のものです。これは青色領域のデータだけ追記してあります。
こまかすぎてよくわからないので480nmから510nmの範囲を拡大して比較してみます。
赤い線は今回の画像と岡山天体物理観測所のデータで暗線に対応がつくもの、細い点線は岡山天体物理観測所のデータにはあるが今回の画像でははっきりと認識できないものです。
なお位置が若干ずれていますが、データ処理に問題があるのか赤方偏移のせいなのかはまだ確認していません。
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少なくともこの領域については次のことが言えると思います。
輝度の変動は原則フラウンホーファー線によるものと考えて差し支えなさそう。
DVD簡易分光器のフラウンホーファー線の捕捉率は国立天文台岡山天体物理観測所の91cm望遠鏡に取り付けられた分光器に迫る勢い (^^;;
もちろん天文台の分光器の実力はこんなものではないです。「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....」みたいな話もあるのですが、もっと身近な例を見つけました。
「簡易分光器のフラウンホーファー線を岡山天体物理観測所と比較してみた(b線) 」
ただ
1. (0.5nm以下程度に)接近したフラウンホーファー線は分離できていない。
2. 強度のないフラウンホーファー線は暗線であることを判断するのは難しい。
のはしようがなさそうです。なにせ簡易分光器ですから。
色解像度はもう少しは上げられるような気がしています。色解像度が上がればとうぜん1.は解決するわけですが、それにともなって弱いフラウンホーファー線の検出もできるようになり2.もかなり改善すると思われます。
最初作った簡易分光器では(三波長型でない)蛍光灯の水銀の二重線は蛍光物質の連続スペクトルにつぶされて見つけることがむずかしかったのですが、色解像度が向上した改良版でははっきり認識できるようになったという経験があるからです。
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