太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線
簡易分光器の改良が終わり、スペクトル画像の分析手法も方針が定まったので再度フラウンホーファー線を調べてみました。
結果から先に書くとこうなりました。
上のグラフの範囲です。画像はオリジナルではなく数値化されたデータから再画像化したものです。
Wikipediaにあるような主要なフラウンホーファー線とされるものがどこにあるかは確認できました(b4、D3はまだ検出できていません)
<== 簡易分光器でb3とb4を分離するのはムリっぽいです。
<== 理科年表を見るとb1、b2、b4を分離できれば問題ないようです。
理科年表の“主な太陽吸収線”にはb3はありませんでした。
またb4についてはWikipediaと理科年表は波長が異なります。
D3も理科年表にはなく実際のスペクトルを見てもそれらしい目立った吸収線はありませんでした。
この範囲でも数百のフラウンホーファー線が検出できているようで、それぞれがどの原子のものなのか調べ始めたのですが遅々として進みません。太陽にはたいていの元素はあるようでそうそう簡単に同定できるものではなさそうです。
上のグラフは暗線の位置がはっきりしませんが、これは
迷光対策が不十分でコントラストが悪化している
色分解能が不足している
ことが原因のようです。この二点を解決すると暗線の位置ははっきりわかるようになります。
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上の結果を得るための過程を書きます。
まず「DVD簡易分光器の改良 (4) - 組み立て」で作った簡易分光器で太陽光を撮影します(太陽光と言っても雲に向けてシャッターを切るだけです)
次に撮影した画像からスペクトル部分を切り出します。
これをFITS形式に変換し「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法」に書いた方法で一次元化&数値化します。
どの線だかはっきりわかるフラウンホーファー線から画像位置と波長を調べ画像位置と波長の関係の近似式を作っていきます。近似式は二次関数を使います。「DVD簡易分光器の波長と画像位置の関係」に書いたようにある程度残差が残ってしまうのですが、三角関数を使ってしまうと波長から画像位置を求めるのが面倒になってしまうので今回は二次式にしました。
残差は理論的(?)に検討した「DVD簡易分光器の波長と画像位置の関係」にある残差のグラフと傾向的に似ていますので特に問題なさそうですし、残差は1nm(これは7ピクセル程度に相当します)以下になっているのでいいことにします。
こうやって作ったものが最初のグラフになります。
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以下拡大図を示しますが、その後撮影した画像も利用して作っています。
スペクトル画像はオリジナルの画像を数値化(+一次元化)したのち、画像上の位置が波長に比例するように再画像化したものです。
撮影に使用した機材(?)については
「DVD簡易分光器の色分解能を蛍光灯の輝線で実測してみた」
を御覧ください。“フラウンホーファー線観測仕様”の方です。
吸収線の波長については
「簡易分光器用 - 輝線・吸収線の波長表(フラウンホーファー線を含む)」
にまとめつつあります。
拡大図1(420nm~480nm)
拡大図2 (480nm~540nm)
理科年表を見るとb線はb1、b2、b4からなっており、これらはきちんと分離しています。
一方E線はある程度色分解能がないととてもわかりづらいです。もやもやとした黒い帯の間に挟まれた暗線がE線です。
拡大図3 (540nm~600nm)
以前から目標としていたD1、D2の分離はフラウンホーファー線でも達成できたようです。
拡大図4 (600nm~660nm)
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コメント
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一連の記事を拝見して、真似を始めました。
http://radiopench.blog96.fc2.com/blog-entry-671.html
この記事の終わりのほうに書きましたが、DVD-Rの色素はエタノールに溶けた
ので、媒体を綺麗に剥離することが出来ています。
投稿: ラジオペンチ | 2016年6月 7日 (火) 20時37分
じつはコメントを拝見する前に記事を見させていただき今ラジオペンチさんの記事へのリンクを追加したところでした (^^;;
エタノールの件、とても参考になりました。
DVD-Rは剥離して使っているのですがあの汚さはどうにかならないものかと思っていたのですがエタノールで落ちるわけですね。
明日試してみて、うまくいってもいかなくても記事にしたいと思っています。
ありがとうございました m(._.)m
投稿: セッピーナ | 2016年6月 7日 (火) 20時59分