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2016年6月26日 (日)

デジカメの分光感度特性はRAWデータを調べればわかる?

(スペクトル画像からできるだけ実態に近い分光分布曲線を作りたいということがあり)これまでデジカメの分光感度特性については何度か記事にしたのですがいずれもすっきりしないものでした。

いろいろ考えたのですが、要するにJPEGを相手にしているからダメなのだ、という結論になりました。JPEGは表示したとき(人間が見たとき)写真を撮ったときの情景を再現するように加工されているわけで人間の刺激に対する感覚まで考慮されているはずです。

ひょっとしたらRAWデータにはセンサーが受けた光の強さに応じて発生した電気信号の値がそのまま保存されているのではないかと思い調べてみました。

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まず写真を撮りRAW形式で保存します。RAW形式からRGB値を抜き出す手段はわからないのでUFRawでRAWデータの内部のデータをそのままRGB値としてJPEGに保存する方法はないか調べます。

Ufraw

この設定だとRaw histogram with conversion curves を見る限りそれらしい感じになっています。

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さっそくこれを保存しGIMPでJPEGに変換し分散軸を水平にした上で保存します。
Imgp9397m40d0e1000


さらにこれをマカリィで数値化+一次元化を行います。
Photo_2

こうやって1EVずつ変化させて撮った4枚の画像のRGB数値データをグラフにしてみました。

Raw3ev

RGBそれぞれ4本あるのですがそれぞれのグラフは1EV分露出が増えると数値がだいたい倍になっています。これは露光量に比例したRGB値が得られていることを意味します。

これまでデジカメの分光感度特性を検討する前にRGB値と露光量が(対数圧縮を考慮しても)線形でなく____それも波長と強度のとても複雑な関数になっている____ことに悩んでいたわけで、この問題はRAWデータを分析の対象とすることであっさり解決しそうです。

これはクリプトン球の撮影結果なので波長に対する光の強さは黒体輻射とだいたい一致しているはずです。とすればそれぞれの色のセンサーがどういう分光感度特性をもっているかを知ることもそれほど難しいことではなさそうですし、RGBから特定の波長の光の強さを求めることもできそうです。

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もし分光感度特性が波長にのみ依存し光の強さに依存しないとすれば赤と緑、緑と青のセンサーの境目を見るとそれぞれの分光感度曲線ha必ず同一の波長で交差するはずです。

デジカメのRGB画像を調べたデジカメ分光感度特性の謎では分光感度特性は波長だけでなく光の強さにも依存していました。だから分光感度曲線が交差する波長もまちまちでした。

今回のRAWデータを処理したものではとうぜんこの点もクリアしています。
Raw3ev2

分光感度曲線が交差する点は光の強さにかかわらずほとんど一定の波長になっています。
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補足1

廊下のむし探検 さんのカメラの波長感度3にあるNikon D70のRAWデータに関する分析結果を拝見すると、この記事とは違う結果になっています。
どんな(メーカーの?)カメラでも直線性が確保されているということではなさそうです。

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補足2

この記事ではRGB値と書いていますが、これは正確ではなくてRGBそれぞれのセンサーの出力値と書くのが正しいと思います。

スペクトルの画像というのはどこをとっても単波長光の色になっているはずです。となるとRGB空間では(マイナス値を使えば定義できるけれども)実際には表示できない色があるはずです。

とは言っても現実にはRGB値で表されているわけで、具体的にどういうRGB値になっているのかも興味があります。


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コメント

この手がありましたか。
少し前の1EVずつ上げて撮影した画像を分析する記事で、デジカメはダメなんだと思っていました。
RAW画像では素直な情報が捉えられているわけですね。
相対等級を求めるのにRAW画像がいいかも知れないと思いました・・・が、RAWのフォーマットって各社まちまちかも^^;
SONYのRAWフォーマットはサポートされない画像アプリも多いですからね^^;

はい、グラフをどう見ても光の強さに比例する出力が得られていると思います。
これまで何をやっていたんだろうと悲しくなります (^^;;
SONYさんは独自路線ですか。
RICOH/PENTAXはDNG出力のようですよ(少なくともDNG出力を選択できる)

ところで“色空間”みたいなことの勉強を始めました。そもそもRGBのR、G、Bってそれぞれ具体的にどう定義されているか、というようなところからはじめています。

昔、FAX用のリニアCCDを使って分光器やスリットカメラとして遊んでました。
冷却すると10秒位は余裕で露光出来るし、簡単な回路で2000〜4000ドットで分解するので便利でした。
最近はあまりCCD自体を見かけないですし、FAXやスキャナから取り出すにしても
カラー化が進んで結局めんどくさそうですね。

手軽にできるということでデジカメを使っているのですが、とにかく問題が多いです。
今回の記事でひとまず直線性の問題は解決したようですが、まだセンサー三色分の分光感度特性が残っています。
FAX用のCCDはおもしろそうですね。スペクトルは一次元ですからそのまま使えるわけですか。
簡単な回路、というのが私にとって簡単かというのが問題ですが、覚えておいた方がいい知識だと思いました。
ありがとうございました m(._.)m

リニアCCDのドライブ回路はそんなに難しく無いです。専用ICもありましたが当時はデジキー等通販も無く
代理店使うほどの事もないのでトランジスタで組んでました。
スキャン速度を上げるために最終てきにはXC2064等でタイミング生成しましたが
プリンタポート出力のソフト生成でも数十ミリ秒でスキャン出来、分光目的なら十分です。
一時期東芝のTCD102等が数百円で大量に出回ってましたが、最近は見ないですね。

速度を気にしないなら、フォトダイオードを使って機械的にスキャンするのが高精度で
回路も更に簡単。6桁くらいは直線性が確保出来るので機械工作が得意であれば。
共焦点光学系にすれば迷光もぐっと減らせますし。

デジカメはピクセルサイズも限界に来てて、元画像はノイズに埋もれていますので
高精度な測定には向かないでしょう。取っ掛かりが手軽なのは確かですが、本質と関係ない部分での努力が大変そう。
横から見る分には楽しめますが。

ご教示ありがとうございます m(._.)m
高精度な観測の方法はいろいろありそうですね。
今はヘリオスタットがなく分光器一式が三脚に載せられるというのが条件になるのでデジカメでどうにかするというのが現実的な方法になっています。
おっしゃるとおり本質と関係ないことに煩わされるのは疲れるので分光器の方はいったん中止してヘリオスタットの方を先に作ろうかとも思っています。

ヘリオスタットいいですね。自室は条件が悪かったので、外に置いた積分球に光ファイバを突っ込んで光ファイバで導入してました。光ファイバの吸収はありますが、光学系の調整にはお手軽で便利です。

光ファイバーもいいですね。
今回のテーマは“簡易分光器でできる”という“縛り”があるわけですが、どこまでが簡易分光器なのかちょっと微妙なところがあります。
ヘリオスタットは分光器自体には手を加えないわけですし、太陽を直接観察しているのと同じだから許容範囲かなあ、とか (^^;;

光ファイバの利点は光路の確保が簡単と言うことで、積分球(発砲スチロールの小箱で十分)と組み合わせると、駆動部無しで簡易的に使え、他の物を測定する場合でも、光ファイバを持っていけば済むので分光器のセッティングを触れなくてすみ、再現性が高まることでしょうか。
光路が確保出来るなら部屋にいながら望遠鏡で天体観察出来るヘリオスタットは、簡易分光器以外にも楽しめそうですね。それなりの鏡を使うと簡易な値段では済まないでしょうが。

簡易分光器は「回折格子を使った簡便な物」位の定義だったような気がします。
中学生の頃に作った物はCDなど無い時代でしたので、(市販の回折格子もありましたが)回折格子から作ってました。今から考えると全然簡便じゃ無いですね。

対物レンズやコリメータを使わずスリットと回折格子(CD、DVD、レプリカグレーティングなど)だけでできているというのが簡易分光器と考えています。すぐに行き詰まると思っていたのですが、なかなか限界が見えずキリがないです (^^;;
もともと高価なHαフィルターを使わずに太陽のHα写真を撮るにはどうしたらいいかというあたりから始まったのですが、このぶんではとうぶん簡易分光器で遊べそうです。

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