簡易分光器の原理(仕組み) (2)
前回の記事 「簡易分光器の原理(仕組み) (1)」 でスリットS から入射し回折格子上のR1で反射してカメラセンサの中央Qに向かう光は(P~R1 の延長上にある)R を通るということを書きました( 1/f = 1/PO+1/OQ を満たす位置にP とQ があることが前提です)
どんな光でもこの経路を通る(通れる)わけですが、回折格子の反射光ですから実際には特定の波長の光だけがQに達することになります。この波長はだいたいは
λ = ±m * d ( cos(S・R1・G2のなす角) - cos(R・R1・G1のなす角 )
±m * λ = d ( cos(S・R1・G2のなす角) - cos(R・R1・G1のなす角 ) )
となるわけですが、この式は入射光・出射光が平行であるという前提のものですから厳密には正しくないです。
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正確な波長は次のようにして求めます。
R1と回折格子の格子間隔(格子定数)だけ離れたR1' を考えます。スリットを出てR1' で反射する光はS~R1'~R~Qと進みます。P、R1'、R'の三点が直線上にあるのは同じです。
ここで求めたいのはS~R1~R~Qと進んだ光とS~R1'~R~Qと進んだ光が1波長違うような波長です。途中にレンズが入っていてややこしいですが、Pを出てQに届く光はどのような経路を通っても同じ時間かかるので(レンズに入射する前であれば)Pを中心とする半径r(=P~Rs)の円周上の点からQまで届くのにも同じ時間がかかるということになります。
このことからR1で反射する光とR1'で反射する光の光路の差はS~R1 + P~R1 - P~Rs と S~R1' + P~R1' - P~Rs の差ということになります。まとめると
λ = | ( S~R1' + P~R1' - P~Rs ) - ( S~R1 + P~R1 - P~Rs ) |
となります。
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以上をもとにスリットや回折格子の位置関係から簡易分光器の特性を示す式を作れればいいのですが、その力がないのでExcel でごりごり計算することにしました。
次の記事ではこれをもとに作ったExcelシートとその使い方、またそのExcel でシミュレートしたいろんなケースを紹介したいと思います。
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ところで入射角・出射角から計算した波長と上のようにして計算した波長はどの程度ちがうものなのか?実際に計算した例をあげておきます。

左側のλ が上のように計算したもの、右側のλ が入射角・出射角から計算したものです。回折格子上の反射点の位置(ΔL)を1mmずつ変化させながらλを求めています。
この違いを大きいと感じるか小さいと感じるかは使い方、目的によって変わります。
なお上の計算は右側の青い字で書いてある条件によるものです、スリットと回折格子の距離が500mmありますが、これをもっと小さくすると当然のことながら二つのλ の差はもっと大きくなります。
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次の記事 「簡易分光器の特性をExcelでシミュレーションする」
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波長表
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分光器原理設計
分光器構造
回折格子他
観測装置
いろんなスペクトルの例
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太陽、光源について
炎色反応
スペクトルの分析
応用
分光観測の歴史
色について
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「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
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このことからR1で反射する光とR1'で反射する光の光路の差はS~R1 + P~R1 - P~Rs と S~R1' + P~R1' - P~Rs の差ということになります。まとめると
λ = | ( S~R1' + P~R1' - P~Rs ) - ( S~R1 + P~R1 - P~Rs ) |
となります。
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ところで入射角・出射角から計算した波長と上のようにして計算した波長はどの程度ちがうものなのか?実際に計算した例をあげておきます。

左側のλ が上のように計算したもの、右側のλ が入射角・出射角から計算したものです。回折格子上の反射点の位置(ΔL)を1mmずつ変化させながらλを求めています。
この違いを大きいと感じるか小さいと感じるかは使い方、目的によって変わります。
なお上の計算は右側の青い字で書いてある条件によるものです、スリットと回折格子の距離が500mmありますが、これをもっと小さくすると当然のことながら二つのλ の差はもっと大きくなります。
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