ナトリウムD線のはざま
ナトリウムD線を構成する二つの輝線(吸収線)D1とD2の間のことです。このD1、D2は間隔が0.6nmしかないため簡易分光器を作り始めたころは分離するのにけっこう苦労しました。最初は2nmも離れている水銀の2本の輝線だってちゃんと2本に見えませんでしたから。
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でもさすがに2ヶ月も経つと簡易分光器といえどもそれなりの性能を発揮するようになり、また撮影技術も洗練されてきます。最近は0.6nmも離れている輝線・吸収線を見るとスカスカな感じです (^^;;
今朝撮影したナトリウムD線、オリジナルのJPG画像を縦横25%に縮小しただけです。
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このときはRAWデータでも保存していたのでそちらの方を拡大しトーンカーブを調整してみました。
はじめに気がつくのはD2の方がFD1より濃いことです。この二本は原理的に同じ強度になりそうな気がするのですが、理科年表(おもな太陽吸収線)を見てもD2の方が4割ほど強いです。
理科年表ではD2に“他の元素とも関係ある”ことを示す“*”のマークがついているので複数の吸収線と一緒になってD1より強く見えるということのようです。
さてD1とD2の間をよく見るとD2よりになんだか黒い帯があります。おそらくここには複数の輝線が集まっているのでしょう。
国立天文台岡山天体物理観測所の画像をカンニングしてみます。
国立天文台岡山天体物理観測所
- 太陽のスペクトル - The Solar Spectrum - - ナトリウム D線
提供 国立天文台 「自然科学研究機構 国立天文台 ウェブサイト 利用規程」によります。
予想通りなのですが、細い(弱い)線が何本もあります。簡易分光器でこれを分離するのは難しそうです。でも二つのグループに分かれて見えるくらいのところまではがんばればできそうな気もします。
====> その後分解能を上げて撮り直したらあっさり暗線を検出できました。
6本もありました。この画像の撮影データは新たな記事で書く予定です。
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「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法」で数値化(+一次元化)した結果のグラフ
記号は省略しました。必要な方はお手数ですが
「太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線」
を御覧ください。
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「スペクトルデータをExcelでSVG画像にしてみた」にある方法で波長の変化が直線的になるように再画像化したものです。
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画像の撮影データ(最初の画像の撮影データです)
それぞれの項目については
「CD/DVD簡易分光器設計のポイント」
「(詳細撮影条件付き)三波長型蛍光灯の分光スペクトル」
を参考にしてください。
対物レンズ | 使用せず | |
スリット | タバコ内包紙 | |
間隔 0.25mm | ||
長さ 4mm | ||
遮光板 | タバコ内包紙 | スリットとの位置関係 |
間隔 6mm | ||
長さ 4mm | ||
コリメーター | 使用せず | |
回折格子 | DVD-R 一次回折光 |
保護層を取り除き エチルアルコールで洗浄 |
格子定数 740nm | ||
幅 40mm | ||
クロスディスパーザー BPF |
使用せず | 不要 |
光源 | 薄雲のさした空 | お天気は晴れ |
光源スリット間距離 | ------- | |
スリット・回折格子間距離(Ls) | 480mm | |
スリット・遮光板間距離 | 200mm | |
回折格子レンズ間距離(Lc) | 可能な限り近づけて設置 | |
画像中心波長 | 575.8nm | 実測値 |
入射光と回折格子のなす角(θ1) | 約11.6度 | 撮影結果に基づく推定値 λ= 575.8nm |
回折格子とカメラ光軸のなす角(θ2) | 約78.4度 | 〃 |
入射用パイプの中心軸とカメラ光軸のなす角(θa) | 約90度 | 設定値 |
レンズ | TAMRON A06 AF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO |
|
カメラ | PENTAX Q7 | |
絞り値 | f/4.5 |
確かめたら 28mm- 3.5 35mm- 4.0 50mm- 4.5 80mm- 5.6 200mm- 6.3 となっていましたが、連続的に変化しているのかも。 |
露出時間 | 30秒 | |
ISO速度 | ISO-800 | |
焦点距離 | ≒50mm | 35mm焦点距離 ≒230mm |
フォーカシング | 蛍光灯のHg:577/579nmでピント合わせをしたのち撮影。 | |
記録形式 | JPG及びDNG | |
特記事項 | WB: CTE カスタムイメージ: ナチュラル 高感度NR: 弱 ハイライト補正: OFF シャドー補正: OFF |
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スペクトル(画像)の実例
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