(詳細撮影条件付き)三波長型蛍光灯の分光スペクトル
簡易分光器で見た三波長型蛍光灯のスペクトルについては何度か記事にしたのですが、今回はスペクトルを撮影したときの分光器の設置状態やカメラの撮影データをできるだけ詳しく調べてみました。
この記事にある画像を再現できるくらいの情報を集めたつもりです。これから簡易分光器を作ったりスペクトルを撮影される方の参考になれば幸いです。
こんなやり方の方がもっとよく写るというのがあったらぜひ教えてください m(._.)m
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まず撮影条件を示し、それぞれの項目と結果について説明します。
対物レンズ | 使用せず | |
スリット | タバコ内包紙 | |
間隔 0.25mm | ||
長さ 3mm | ||
遮光板 | タバコ内包紙 | スリットとの位置関係 |
間隔 4mm | ||
長さ 0.7mm | ||
コリメーター | 使用せず | |
回折格子 | DVD-R 一次回折光 |
保護層を取り除き エチルアルコールで洗浄 |
格子定数 740nm | ||
幅 40mm | ||
クロスディスパーザー BPF |
使用せず | 不要 |
光源 | 三波長型蛍光灯 | National ME FPL 9EX-N 3波長型昼白色 |
光源スリット間 | 250mm程度 | |
スリット・回折格子間距離 | 320mm | |
スリット・遮光板間距離 | 80mm | |
回折格子レンズ間距離 | 可能な限り近づけて設置 | |
画像中心波長 | 554.2nm | 実測値 |
入射光と回折格子のなす角(θ1) | 約13度 | 撮影結果に基づく推定値 λ= 554.2nm |
回折格子とカメラ光軸のなす角(θ2) | 約77度 | 〃 |
入射用パイプの中心軸とカメラ光軸のなす角(θa) | 約90度 | 設定値 |
レンズ | TAMRON A06 AF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO |
|
カメラ | PENTAX K-r | APS-C |
絞り値 | f/8 | |
露出時間 | 30秒 | |
ISO速度 | ISO-200 | |
焦点距離 | 39mm | 35mm焦点距離 58mm |
フォーカスリング読取値 | 2m強 | λ=546nmにフォーカス カメラではこの値は被写体からフィルム(センサー)までの距離を意味していたと思います。 |
記録形式 | JPG及びPEF | 記事ではJPGの方を使いました。 |
特記事項 | WB: CTE カスタムイメージ: 鮮やか 高感度NR: AUTO 長時間NR: OFF ハイライト補正: OFF シャドー補正: OFF |
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簡易分光器の構造
カメラのレンズを固定するためにアクリル板に取り付けられたレンズフィルターは望遠レンズあるいは口径の大きなレンズ対応ということで今回は62mmとしてあります。
これまでといちばん違うのは入射光の光軸(パイプの中心軸)とカメラの光軸が直交するようにしたことです。これは構造を簡単にして安定した撮影ができることとより高い色分解能の実現を目指したためです。これまでの作り方(中心波長550nmに対し入射角20度、出射角78.6度、パイプの中心軸とカメラの光軸がなす角81.4度)よりこちらの方が全般的に優れているということではありません。(「CD/DVD簡易分光器設計のポイント」とその記事に対するラジオペンチ さんのコメントを参考にしてください)
遮光板は以前作った0.7mmのスリットを流用し0.25mmのスリットとクロスするように入れてあります。細い遮光板を使った方がいい結果が得られたことがあったのでこうしたのですが、ほんとうにそうなのかはよくわかりません。これも光量の不足を招きかねません。
スリット(と遮光板)はラジオペンチ さんの「DVDのメディアで簡易分光器を作る-その2、(フラウンホーファー線が何とか見えた)」にある方法で作っていますが、材料はタバコの内包紙を使っています。加工が容易で強度もあるからです。タバコの内包紙は微妙な凹凸があるように見えるのですが特に問題は感じていません(凹凸を小さくする努力は一応やっています)
カメラはいつもはPENTAX Qですが、どういう写りをするのかイメージしにくいと思うので今回はAPS-CのPENTAX K-rを使ってみました。レンズの焦点距離は400nm~700nmくらいが写るように50mmでやってみるつもりだったのですが、鏡筒(?)が重力に負けて引っ込んでしまったので39mmになってしまいました。
スリットからセンサーまでの距離は50cm程度と思いますが、フォーカスリングの読みが2mくらいになっているのは「CD/DVD簡易分光器設計のポイント」に書いたとおりです。理屈通りフォーカスする輝線の波長によってピントの合う位置は異なってきます。
波長によってピントが合う点は変化します。
このくらいの焦点距離であればフォーカスリングに印をつけておけば輝線が見えなくてもピントを合わせられそうでした。
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撮影結果(画像は縦横25%に縮小しただけです)
「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法」で数値化(+一次元化)した結果のグラフ
赤い矢印で示したところは水銀の輝線です。
青い方の端にある404.7nmの輝線は撮影するのがなかなか難しいです。この画像ではわずかに痕跡がある程度です。404.7nmを確実に写すためには入射角をもっと大きくして中心波長を短い方にずらした方がいいです。赤い方の端の690.7nmにあるはずの輝線はまったく写っていません。この輝線はいまだかって写ったことがないような気がします。
左から三番目の赤い点線で示したところは画像を見ると輝線があるように見えるところです。もしほんとうに輝線だったら波長から言うと水銀の491.6nmだと思います。ただいくらググッてもこの輝線が写っている画像や輝線があるグラフは見つからなかったので自信がありません。
この輝線(?)はとても撮影が難しいです。腕試しにどうぞ (^^;;
もし水銀の輝線だったら一般型蛍光灯だともっとはっきり写りそうですし、一般型蛍光灯で写っていなかったらやっぱり蛍光物質のルミネッセンスだということになりそうです。
最後に「スペクトルデータをExcelでSVG画像にしてみた」にある方法で波長の変化が直線的になるように再画像化したものです。
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スペクトルデータの再画像化
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半導体レーザー出力光の波長の変化
簡易分光器では手が出ないようなもの
スペクトルに関する資料集
スペクトル(画像)の実例
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コメント
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今晩は。入射角13度だとスペクトルが暗くなるので苦しいと思っていたのですが、ちゃんとしたカメラを使うと撮れるんですね。
Hgの491.6nmのスペクトルが見えるかどうかは、腕試しネタとして覚えておきます。
あと、撮影データーの表の中で、
スリット間隔:0.25mm 長さ:3mm
遮光版間隔:4mm 長さ:0.7mm
となっていますが、遮光版の長さが小さ過ぎる気がします。でも、クロスするように入れる、ということなのでこれでいいのかとは思いますが、設計意図がちょっと判りませんでした。
投稿: ラジオペンチ | 2016年7月 9日 (土) 20時27分
K-rはいわゆるエントリー機ですからたいしたことはないです (^^)
遮光板はどうするのが最適なのか正直さっぱりわかりません。今回はいつも使うものが他のに入れたままになっていたのではずすのが面倒くさくて手元にあった0.7mmのスリットを使ってしまいました。
長さが小さいとスペクトル画像が暗くなるものの、その分シャープになるような気がするのですが確証はありません。
どうもDVDの特殊性というのがあるように思うのですが、まだわからないことが多すぎます。
ちゃんとした回折格子と比較してみれば進展があるのと思うのですが、お値段が.... (^^;;
投稿: セッピーナ | 2016年7月 9日 (土) 21時52分