海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経
ここのところ海上保安庁(旧)水路部の略算式で太陽の視位置を求めるということをやっていました。
海洋情報部の計算式には精度が及びませんが(旧)水路部の略算式は一つの係数で長期間使えるというメリットがあり用途によっては便利そうです。実際 長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999 では理科年表を使わないで(今風だと、暦象年表を使わないで)太陽や月の位置を知る方法として水路部の略算式を使う方法を紹介しています。
太陽の位置はもう少し検討が必要なところ(「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」)がありますが、今回は月の位置の略算式を検討してみます
この記事の内容に相当するExcelファイル
「ダウンロード Moon_LonDist_20170626A.xlsx (48.9K)」
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月の位置はやり方は太陽の位置とほとんど変わらないのですが、黄緯も求めなければならず、黄経・黄緯とも太陽とは比較にならないくらい項数が多くてたいへんです。
まず長沢工「天体の位置計算」地人書館 」 あるいは長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書」 から係数を拾います。スキャナー+OCRも考えたのですが、OCRの場合すべての数値を念入りにチェックする必要があるのでそれほどの省力化にはならないだろうということで手入力することにしました。
老眼になると手元の書籍から数値を読み取り画面で入力した数値をチェックするというのを交互に行うのはつらいです。そこで書籍の上にスマホをおいて入力を行いました。眼からの距離がほとんど変化しないので楽に作業できます。スマホの縁が入力位置の確認に使えるし入力ははかどりました。
以下の画像は入力中の様子です。
画面の中に入力ミスが一箇所あります。この画面にある入力誤りを含め黄経を計算するときの係数はチェック・修正済みですが、黄緯の方はまだチェックが終わっていません。少なくとも一箇所は誤りがあるのを確認しています。修正済のものは黄緯に関する記事のときアップロードします。
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以下のE~Gが書籍を見て打ち込んだデータです(これでも一部です)
今回は数式が簡単になるようにラジアンに変換したA~Cを使います。
このデータは長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981 のものですが、長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999 とは元期の違いを考慮すると実質的に同じものです。
「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた」で“時刻原点を変更するなど”と書かれており実際時刻原点の変更以外にも変更が加えられていることを書いたのですが、今回の月の黄経については時刻原点の変更が行われているだけで他に違いはありません(正確には時刻原点の変更のときTの係数がすべてプラスになるようにもします)
I列は元期の変更を行い係数が「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた」 の係数と一致するか確認したときのものです。
またK列は1999年11月11日 00h00mUTの計算結果です。日の入りの計算」地人書館、1999 にある計算例と結果が異なるものについてはL列に日の入りの計算」地人書館、1999 の結果を記入してあります。計算誤差と思われる差異しかありません。
係数が多いためセルにある計算式は長くなります。
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太陽のとき(「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経」)と同様に何点か計算し(NASA)JPL Horizons Web-Interfaceの結果と比較してみました。
日の出・日の入りの計算のようなものに使うのであればまったく問題ない結果です。
次に月の黄緯を求め、その後月の視赤経・視赤緯も求めることになります。
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参考
長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表」
「(NASA)JPL Horizons Web-Interface」
水路部の略算式
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(3) 観測地から見た赤経・赤緯と方位角・高度」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(2) 黄緯と赤経・赤緯」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める」
「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた」
「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味」
「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」
海洋情報部の近似式
「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....」
「水星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方」
天体の位置計算について
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
「月の視位置計算で地心距離の計算に誤りが.....」
「このブログの変更履歴・正誤表など」
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