海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経
月・太陽・惑星の視位置を求めるのに海洋情報部の近似式は正確だが計算の対象となる期間に応じて係数を入れ替える必要があり面倒、そもそも係数が提供されていない期間の計算はできないので、そのときは係数を作るところから始めなければならないというとんでもないことになります。
ということで期間を限定せずに使える近似式がほしくなります。もし海洋保安庁水路部が1978年に発表した略算式が現在の太陽系天体の位置の算出にも使えれば話がとても簡単になります。
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)」 では太陽までの距離について検討しましたので今回は黄経についてです。(視)黄経が算出できればそれから(視)赤経・(視)赤緯を求めるのは簡単です。
検証のためには計算結果を正しい値と比較するする必要がありますが、「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味」 に書いたように理科年表(あるいは国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表> )は今回の目的には使えませんので、(NASA)JPL Horizons Web-InterfaceのObserver ecliptic lon. & lat.の値と比較することにします。
検証対象は以下の日時の太陽の黄経です。
1. 1979年9月14日 00:00TT
2.に近い日時で理科年表に値がある日時です。
2. 1979年9月15日 12:00TT
「天体の位置計算」にある計算例の日時です。
3. 1999年11月14日 06:00JST(11月13日 21:01:04TT)
「日の出・日の入りの計算」にある計算例のの日時です。
4. 1999年11月18日 00:00:00UT(00:01:04TT)
3.に近い日時で理科年表に値がある日時です。
5. 2017年1月1日 12:00TTから90日ごと9月28日まで
6. 2018年1月1日 12:00TTから90日ごと9月28日まで
2.と3.は計算式と係数の入力に間違いがないか確かめるため、5.、6.は略算式が現在でも使えるか確かめるためのものです。
1.、4.、5.、6.は「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味」 に書いたことをより詳細に検討するために使います。
今回の計算に使用したExcelファイルは
「ダウンロード Sun_LonDist_20170605A.xlsx (32.7K)」
にあります。計算式や係数はこれを参考にしていただければと思います。
「太陽黄経(天体の位置計算)」のシートが今回の記事に対応するものです。
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結果は次のようになりました。
まず赤の下線がある部分、1979年9月15日の結果は長沢工「天体の位置計算」の計算例と、1999年11月14日の結果は長沢工「日の出・日の入りの計算」の計算例とよく一致しており、計算式・係数には問題なさそうです。
次に(NASA)JPL Horizons Web-Interface と比較してみても計算結果には特に問題ないようです。1979年、1999年に比較すると2017年、2018年の結果はちょっと誤差が大きくなっています。でも角度で5秒以下です。太陽の直径の1/400以下の違いということですから、少なくとも日の出・日の入りの計算くらいならまったく問題なく、それ以上の精度が要求される目的にも使える結果です。
水路部の略算式は50年近く前のものですが、現在でも使えそうです。
次はもう一つの長沢工「日の出・日の入りの計算」にある略算式についても同様に検討してみます(実は上のExcelファイルにはもうシートが作ってあるのですが)
なお(NASA)JPL Horizons Web-Interface から上のデータを得るときのパラメータの設定は次のとおりです。
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参考
長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表」
「(NASA)JPL Horizons Web-Interface」
水路部の略算式
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(3) 観測地から見た赤経・赤緯と方位角・高度」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(2) 黄緯と赤経・赤緯」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める」
「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた」
「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味」
「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」
海洋情報部の近似式
「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....」
「水星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方」
天体の位置計算について
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
「月の視位置計算で地心距離の計算に誤りが.....」
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