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2017年6月11日 (日)

「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた

海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)」 と 海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経では長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981 に紹介されている海洋保安庁水路部(現在の海洋情報部)の略算式を使ったのですが、同様の略算式が長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999 にも紹介されています。

この略算式は同書の説明によれば

この表の式はもともと海上保安庁で開発したもので、時刻原点を変更するなど、私がちょっと手を加えたものである。

となります。実際に海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経」  と同じ計算をやってみました(詳細は下記のExcelファイルを御覧ください)

Sun_londist_20170610a00

時刻引数を正しく設定すれば同じ結果が得られるそうに思えるのですが、ちょっと違っています。計算の各項について個別に比較してみます。

Sun_londist_20170610a01

ほとんどの項は一致しているので時刻引数は正しく設定できていると思います。“時刻原点を変更するなど”と書かれていますので係数に何か意図的な変更が加えられているのかもしれません。

2017年、2018年あたりの結果はこちらの方がよく一致しているようにも見えます。

上のExcelファイルは

  ダウンロード Sun_LonDist_20170610A.xlsx (33.6K)

からダウンロードできます。

====================

念のため「天体の位置」にある略算式の係数から“時刻原点を変更する”ことだけやって新たな係数を決めたらどうなるか調べてみました。

各項は(一部を除いて)

  a * sin( radians( b + c * (T-T0) )

の形をしています。ここで係数aとcは時刻原点が変わっても同じ値になるはずです(後でふれますが、符号を変えるというのはできます)

「天体の位置計算」にある水路部の略算式の時刻原点と係数bをT1975.1.0ET、b1、「日の出・日の入りの計算」の略算式の時刻原点とbをTJ2000.0、b2とすると


  a * sin( radians( b + c1 * (T - T1975.1.0ET) ) = a * sin( radians( b + c2 * (T - TJ2000.0) )

という関係が成り立ち、これからb2を

  b2 = b1 +  c * (TJ2000.0 - T1975.1.0ET)

で求めることができます。

時刻原点の差は具体的には9132.5日なので

  b2 = b1 +  c * 9132.5 / 365.25

となります。

実際には(実用的には?)

  b2 = mod( b1 +  c * 9132.5 / 365.25 , 360 )

ですが、本質ではないのでこれは省略します。

------

「天体の位置計算」では係数(aとc)は正負混在しています。一方「日の出・日の入りの計算」ではすべてプラスの値です。じっさいやってみるとわかるのですが正負混在は符号を見落としやすいです。利便性を考えてすべてプラスに変換したのでしょう。この変換は次のようにします。

a < 0 のとき

  a  <==  -a

  b2 = b1 +  c * 9132.5 / 365.25 + 180

c < 0 のとき

  b2 = -( b1 +  c * 9132.5 / 365.25 ) + 180

  c <== -c

これを実際の係数に適用して係数を比較してみました。

  ダウンロード Sun_LonDist_20170611A.xlsx (35.6K)

ほとんどの係数は一致するのですが、どういうわけか一致しないところがあります。この記事の2番めの画像でマークしたところ(最初の2項と、最後の一項)がそれです。

この三項は“時刻原点を変更する”、“係数の符号がプラスになるようにする”以上の変更が加えられています。どういう意図でそのような変更が加えられたかは不明です。

これはいくら考えてもわからないので次は黄経から赤経・赤緯を求めてみたいと思います。

--------------------

参考
  長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
  長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
  福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
  長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
  「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表
  「(NASA)JPL Horizons Web-Interface

  水路部の略算式
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(3) 観測地から見た赤経・赤緯と方位角・高度
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(2) 黄緯と赤経・赤緯

    「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)
    「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経
    「海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める

    「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた

    「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味
    「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」

  海洋情報部の近似式
    「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
    「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
    「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

  海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
    「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....
    「水星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方

  天体の位置計算について
    「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで
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    「このブログの変更履歴・正誤表など

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