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2017年6月19日 (月)

海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に

今、長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999 を参考に海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置を求めています。
少なくともに長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999 の略算式に関しては太陽と惑星が1979年の天測暦、月が1980年の天測暦にあったものだそうです。おそらく天測暦には使用上の制約・制限みたいなことが書いてあったのだと思いますが、これらの略算式がいつまで使えるものかがわかりません。

すでに記事にしたように現時点では1980年とくらべそれほど悪くない精度で太陽の位置を求めることができました。ではこれからどのくらい使えるものなのか?

試しに100年先と1000年先の太陽の黄経(とそれから計算した視赤経・視赤緯)を求めてみました。今回の記事の内容は次のExcelファイルの計算結果を元にしています。

  ダウンロード Sun_LonDist_20170615A.xlsx (51.8K)

結果もこれまで通り(NASA)JPL Horizons Web-Interface の推算と比較しています。

結論だけ先に書きます(結論と言っても一年のうち90日ごとに4点でチェックしただけです。何かの目的に使う方はもっと丁寧に検討した方がいいです)

以下では時間が経つにつれ誤差が大きくなりそうだ、ということを書いていますが、これはExcelの計算誤差に原因があるのかもしれません。これについては現在検討中で結果を近々記事に追記する予定です。

100年後

2017年、2018年と比較すると誤差は数倍になっています。1979年と比較すると精度は一桁悪くなっています。
と言っても今回計算した日時での誤差は最大0.004°ですから太陽の直径の1/100以下です。

1,000年後

100年後に比べてさらに精度が一桁悪くなります。つまり誤差は太陽の直径の1/10くらいになります。
ぎりぎり日の出日の入り時刻の予測に使える程度ということになります。

もっとも今後1000年間の地球の自転がどう変化していくかなんて誰にもわからないでしょうから太陽の位置は予測できても日の出日の入りの時刻の予測みたいなのはあんまり意味はなさそうです。

それと章動モデルというのはどの程度正しいのでしょうか。今後の地軸の変化が予測と違ってくれば赤経・赤緯に影響が及びます。 (NASA)JPL Horizons Web-Interface  では太陽の黄経は小数点以下7桁まで表示されているのに、赤経は小数点以下5桁までです。ひょっとしたらこういうことの影響なのかもしれません。

==================

長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981にある黄経の略算式による結果

Sun_londist_20170615a_01


長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
にある黄経の略算式による結果

Sun_londist_20170615a_02

赤経・赤緯も計算してみました。これについては上からダウンロードできるExcelファイルに (NASA)JPL Horizons Web-Interface との比較があります。

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参考
  長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
  長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
  福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
  長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
  「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表
  「(NASA)JPL Horizons Web-Interface

  水路部の略算式
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(3) 観測地から見た赤経・赤緯と方位角・高度
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(2) 黄緯と赤経・赤緯

    「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)
    「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経
    「海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める

    「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた

    「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味
    「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」

  海洋情報部の近似式
    「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
    「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
    「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

  海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
    「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....
    「水星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方

  天体の位置計算について
    「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで
    「月の視位置計算で地心距離の計算に誤りが.....
    「このブログの変更履歴・正誤表など

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コメント

ご無沙汰してます、今晩は。

長沢 工さんの本に書かれている太陽位置の略算式 (P71,表3.11) は、まだ使えるんですね。とても勉強になりました。

実は簡単な式で日の出/日の入り時刻を算出するプログラムを作ったのですが、
http://radiopench.blog96.fc2.com/blog-entry-735.html
誤差が60秒くらいあって精度が悪いです。

これ、1年周期が前提の近似式を使っているので、他の天体(たぶん月が最大)の影響が入っていないのがいけないんだろうなー、と思っていました。

機会があったら、この記事の計算方法を参考にしてもっと精度の出るプログラムを作ってみようかと思います。

こちらこそご無沙汰しています。
今回チェックしたのは少数のサンプル点ですが、年々次第に精度が落ちて来ているようです。
でも日の出日の入りの計算であればあと100年くらいは問題なく使えそうですね。
Arduinoで作られていますが、GPS受信モジュールと組み合わせれば今いるところの日の出日の入り時刻を表示したり日の出の時刻にアラームとかできそうですね(障害物がないという条件ですが)

なおこの略算式のそれぞれの項がどの天体の影響かというのは一部ですが
  『新法暦書』管見 ~天保暦と木星~
  http://www.asahi-net.or.jp/~jc1y-ishr/Kyuureki/Tenpoureki_Jupiter/
に説明がありますのでご参考まで(木星の影響も大きいようです)

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