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2017年6月 8日 (木)

理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味

月・太陽・惑星の視位置を求めるのに海洋情報部の近似式は正確だが計算の対象となる期間に応じて係数を入れ替える必要があり面倒。期間を限定せずに使える近似式がほしい。

ということで水路部の略算式の検討をはじめました。まず海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)で太陽までの距離を求めてみたので次は黄経ということになります(最終的には黄経から赤経・赤緯を求めます)

じつはすでにいろいろやっているのですが、結果の検証のところでつまづいています。計算した結果を理科年表(あるいは国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 )にある値と比較すればいいだろうと思っていたのですが、それでは検証にならないようです。
つまり水路部の計算式で求める黄経と暦象年表にある黄経は別物のようです。

水路部の略算式による太陽位置の記事の前にそれぞれの資料・計算式にある黄経の意味について確認しておきます。

==========

まず水路部の略算式によって得られのは「天体の位置計算」や「日の出・日の入りの計算」によれば“視黄経”のようです。“視黄経”という言葉を天文用語として明確に定義したものを見たことはないような気はしますが、視位置・視赤経から考えると「地心から見た天体の観測の瞬間の真春分点、黄道にもとづく座標」ということだと思います。

「観測の瞬間の春分点」ではなく「観測の瞬間の真春分点」と書いてあるのは春分点(と赤道)を決めるとき章動を考慮しているということを意味しています。もし章動を考慮していなければ(=歳差だけしか考えていなければ)“平均春分点”です。
ただこれだけでは厳密な定義になってなくて光行差の影響も加味するか否かというような問題はあります。視位置や視赤経という場合は光行差の影響は加味したものになりますので、視黄経という場合はそれを考慮に入れたものになると思いますが....

一方理科年表の場合は年代によって黄経の意味が異なるようです。以下理科年表の1979年版、1999年版、2017年版それぞれの意味と(NASA)JPL Horizons Web-Interface でのObserver ecliptic lon. & lat.の意味を調べてみました。1979年というのは「天体の位置計算」の計算サンプルに、1999年というのは「日の出・日の入りの計算」の計算サンプルにある日時です。

1979年版
理科年表
太陽の黄経、黄緯、距離、視半径
すべて暦表時0hの値である。黄経はその日の平均分点に対するもの光行差は含まれていない。距離は天文単位で表した地球からの真距離で、光行差の影響を含まない。視半径は1天文単位から見た値を16'1.18"として計算したものである。黄経の歳差は1979年のベッセル年初(1月0.947日暦表時)より数えたもので、章動は長周期項だけをとったものである。
1999年版
理科年表
太陽の黄経、距離、視半径、黄経の歳差、章動 
すべて世界時0hの値である。黄経、黄緯はJ2000.0(基準元期=2000年1月1.5日=JD245151545.0)の平均分点と黄道にもとづいている。距離は天文単位(1.29597870x10^8km)で表した地球からの真距離である。
視半径は太陽を1天文単位から見た値を16'1.18"として計算したものである。
これらの諸量は光行差の影響を含んでいない
2017年版
理科年表
(暦象年表)
太陽の黄経、黄緯
黄経、黄緯はJ2000.0の平均黄道座標系にもとづいている
距離、視差、視半径
距離は天文単位(1.29597870.7km)で表した地球からの真距離である。
(省略)
太陽の視半径は距離が1天文単位のときの値を961.18"として計算した。
これらの諸量は光行差の影響を含んでいない。

注 世界時0hの値
JPL Horizons ObsEcLon ObsEcLat
Observer-centered Earth ecliptic-of-date longitude and latitude of the target center's apparent position, adjusted for light-time, the gravitational deflection of light and stellar aberration. Although centered on the observer, the values are expressed relative to coordinate basis directions defined by the Earth's true equator-plane, equinox direction, and mean ecliptic plane at print time.

注 日時は世界時と地球時が指定できる。

理科年表は1900年台の終わりに掲載内容の変更があったようです。

こうやって見ると水路部の略算式の結果は真春分点にもとづき光行差の影響も考慮している(NASA)JPL Horizons Web-Interface でのObserver ecliptic lon. & lat.の値と比較した方がよさそうです。

次の記事では水路部の略算式でじっさいに太陽の黄経を求めてみたいと思います。

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参考
  長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
  長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
  福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
  長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
  「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表
  「(NASA)JPL Horizons Web-Interface

  水路部の略算式
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(3) 観測地から見た赤経・赤緯と方位角・高度
    「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(2) 黄緯と赤経・赤緯

    「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)
    「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経
    「海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める

    「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた

    「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味
    「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」

  海洋情報部の近似式
    「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
    「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
    「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

  海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
    「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....
    「水星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方

  天体の位置計算について
    「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで
    「月の視位置計算で地心距離の計算に誤りが.....
    「このブログの変更履歴・正誤表など

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