海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める
海上保安庁水路部(=海洋情報部の前身)の略算式で太陽の位置を求める方法は現在でも使えることがわかりました。ただ略算式で得られるのは黄経なのでこれを赤経・赤緯に変換します。
長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981 によれば水路部の略算式から得られるのは“視黄経”とされています。となると(視黄緯をゼロどして)黄道傾斜角の分x軸を中心に回転するだけで視位置(視赤経、視赤緯)が求まりそうです。
“視”がついているので座標は瞬時の春分点・赤道にもとづく値のはず、となると黄道傾斜角は真黄道傾斜角を使うことになるように思えます。でも長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981 を見ると(そうと明記されていませんが、式から考えると)使っているのは平均黄道傾斜角のようです。
平均黄道傾斜角を使うのが本質的に正しいのか、精度的(「日の出・日の入りの計算」で要求される精度は±0.02°)に問題ないから平均軌道傾斜角を使っているのかよくわかりませんが、私も平均軌道傾斜角を使って変換することにします(真黄道傾斜角を計算で求めるのはけっこう面倒ということもあります。真黄道傾斜角を計算で求めている例は「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」などからダウンロードできるExcelファイルの中にあります)
この記事に相当するExcelファイルは
「ダウンロード Sun_LonDist_20170614A.xlsx (37.9K)」
からダウンロードできます。
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と比較してみました。
これまでと同じように1979年、1999年、2017年、2018年での値を 国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表、(NASA)JPL Horizons Web-Interface と比較してみました。
あああこの表の範囲に限れば誤差は大きいところでも0.001°のオーダーなので、日の出・日の入りの計算に必要な精度より一桁高い精度で太陽の視位置が求まっていることがわかります。ただ適用範囲を絞った海洋情報部の近似式(「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」)よりは2桁近く精度が落ちることになります。
今回 国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 は太陽の地心座標 からデータを取得しており、(NASA)JPL Horizons Web-Interface は次のような条件でデータを取得しています。
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参考
長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表」
「(NASA)JPL Horizons Web-Interface」
水路部の略算式
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(3) 観測地から見た赤経・赤緯と方位角・高度」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(2) 黄緯と赤経・赤緯」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める」
「海上保安庁水路部の惑星位置の略算式 - 火星の(日心)黄経・黄緯」
「海上保安庁水路部の惑星位置の略算式 - 火星の視赤経・赤緯」
「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた」
「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味」
「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」
海洋情報部の近似式
「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....」
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天体の位置計算について
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
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