海上保安庁水路部の惑星位置の略算式 - 火星の視赤経・赤緯
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では(昔の)海上保安庁水路部の略算式を使って太陽から見た火星の黄経・黄緯を求めました。たいていの場合必要なのは視位置(視赤経・視赤緯)なのでこれらを求めてみました。
具体的な計算手順を詳しく説明するのはたいへんなので計算に使ったExcelファイルをダウンロードできるようにしました。
「ダウンロード PlanetsMars_LonLatDist_20170712A.xlsx (102.8K)」
なぜそういう計算になるのか、というのが気になる方はこの記事の最後にある“参考文献”をご覧いただければと思います。簡単な説明だったら
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
のリンク先にあるものもあります。
おおまかな手順は次のとおりです(括弧の中の英字はその計算をしているExcelのセルの列名です)
1. 火星の(日心)黄経・黄緯から(日心)直交座標を求める (L)
2. 太陽の(地心)黄経・黄緯から地球の(日心)直交座標を求める (L)
3. 地球と火星の(日心)直交座標から火星の(地心)直交座標を求める( L)
4. (地心)直交座標を(地心)黄道座標に変換する (M)
5. 惑星光行差を補正する (M)
6. 火星の(地心)直交座標を視位置に変換する (C)
(黄道傾斜角だけ座標の回転)
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以下いろいろ書いていますが、±0.01°で結果が得られればいいというような用途であればあんまり気にすることはないです。
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2017年の1月1日12時UTから90日ごとの火星の位置、1975年9月15日12時TT、2000年1月1日12時TTの火星の視位置を求めてみました。
結果は視位置(瞬時の赤道座標系での位置)なので今回は「(NASA)JPL Horizons Web-Interface」で答え合わせができます。
1979年9月15日12時TTについて結果が二つあります。55~58行目は最後の黄道座標系から赤道座標系への変換に平均軌道傾斜角を使ったものですが、視赤緯の誤差がちょっと大きいです(平均軌道傾斜角は確か福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009にあった近似式でWikipediaにある近似式と実質的には同じものです)
水路部(天測暦)の略算式には黄道傾斜角の近似式もあります。それを使って視位置を計算したものが59~62行目の結果です。こちらは上の結果よりよく一致しています。
天測暦の黄道傾斜角の近似式は簡単なものなので真黄道傾斜角ではなさそうです。でも周期項が入っているので平均黄道傾斜角とは異なります(実際一致していません)
おそらく歳差+主要な(≒長周期の)章動項というようなものではないかと思います。
2017年6月30日12時UTについては自前の平均黄道傾斜角で求めたもの(35~38行目)、暦象年表の平均黄道傾斜角で求めたもの(39~42行目)、暦象年表の真黄道傾斜角で求めたもの(43~46行目)と三パターンやってみましたが、これも章動を考慮した真黄道傾斜角を使ったものの方が誤差が少ないです。
視位置というのは瞬時の春分点・赤道にもとづくものとすれば真黄道傾斜角を使うのが正しいのでしょうが、真黄道傾斜角も求めるための章動の計算は(何度も書くように)面倒です(実際に章動を計算している例は「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」などにあります)
水路部の略算式で求まるのは“平均春分点に対する位置”と書かれています。
となると黄経について章動の影響を補正する必要もありそうです(実際上の結果を見ると赤経の誤差はけっこう大きいです)
もっともその前に水路部の略算式に真春分点、真黄道傾斜角を使う意味があるだけの精度があるのか長い期間で細かくチェックしておいた方がよさそうですが....
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参考
長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表」
「(NASA)JPL Horizons Web-Interface」
水路部の略算式
「海上保安庁水路部の略算式 - 水星の視位置(視赤経・視赤緯)」
「海上保安庁水路部の惑星位置の略算式 - 火星の(日心)黄経・黄緯」
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「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」
海洋情報部の近似式
「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....」
「水星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方」
天体の位置計算について
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
「天文計算のための天文用語集 - 1」
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