海上保安庁水路部の略算式 - 水星の視位置(視赤経・視赤緯)
これまでの流れでタイトルを「海上保安庁水路部の...」としましたが、じつはちょっと違います。
前回書いた火星をはじめ金星、木星、土星は略算式が「天測暦」に掲載されていたようです。一方今回の水星をはじめ天王星、海王星、冥王星は水路部で研究されたものには間違いないのでしょうが論文として発表されているそうです。
このことは長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981に書いてあったのですが、これによると水星位置の略算式は「水路部研究報告 No,15(1980)の久保良雄氏の論文から採ったもので....」とのことです。
これはどこかで書きましたが、火星他の惑星の位置略算式が天測暦に掲載されるのはこれらが明るく目立つ惑星で天測の対象になるからです。
それに対し水星他の惑星は(見えるときでも)どこにあるのか探すのに一苦労するような惑星で、天測の対象にするのは難しいので参考資料として論文という形で発表されたのでしょう。
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水星(と天王星、海王星、冥王星)の位置略算式も火星なんかの略算式に似ているのですが、細かい違いがいくつかあります。結果がちゃんと出るまでけっこう手間取りました。
これまで同様Excelがダウンロードできます。
「ダウンロード PlanetsMercury_LonLatDist_20170714A.xlsx (124.1K)」
やり方は火星と同じでまず略算式で日心座標(黄経・黄緯)を求めそれを地心座標に変換し、最後に視位置(視赤経・視赤緯)を算出します。
日心座標をもとめ地心座標に変換するところです。
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日心座標を「(NASA)JPL Horizons Web-Interface」 にある値と比較していたのですが、よく考えると「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表」に「惑星の日心座標」というのがありました。黄経・黄緯・動径が得られるのですが、「瞬時の平均春分点と黄道に基づく座標系における値です。」という説明があります。
これだけでは、これが幾何学的位置(真の位置)かどうかはわからないのですが、説明が水路部の略算式と同じなので比べてみたのが最初の画像です。水路部の略算式の精度を考えるとこれが私の求めていた正解(瞬時の(平均)春分点、黄道に基づく惑星の(光行差を考慮しない)幾何学的位置)なのかもしれません。
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最初の画像に「地心黄道座標」がありますがこれを黄道傾斜角だけ回転させてば視位置が求まります。
日時によっては火星のときと同じように黄道傾斜角を真黄道傾斜角や水路部の略算式で求めた傾斜角に変えて算出しています。
結果は火星のときとだいたい同じ傾向にあります。
・赤経の精度があんまりよくないです。
・赤緯の精度は真黄道傾斜角や水路部の略算式で算出される傾斜角を使った方がよくなるようです。
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このあとは
・さらに精度を上げる方法はあるのか(計算方法に誤ったところ、不十分なところがないか)検討する。
・ひとまず火星・金星以外の惑星のデータを入力し全惑星の位置が計算できるようにする。
のどっちかに進む予定です。
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参考
長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981
福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社、2009
長沢工「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999
長沢工「日食計算の基礎」地人書館、2011
「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表」
「(NASA)JPL Horizons Web-Interface」
水路部の略算式
「海上保安庁水路部の略算式 - 水星の視位置(視赤経・視赤緯)」
「海上保安庁水路部の惑星位置の略算式 - 火星の(日心)黄経・黄緯」
「海上保安庁水路部の惑星位置の略算式 - 火星の視赤経・赤緯」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(1) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(2) 黄緯と赤経・赤緯」
「海上保安庁水路部の略算式 - 月の位置の略算(3) 観測地から見た赤経・赤緯と方位角・高度」
「海上保安庁水路部の略算式で求めた月の位置を図にしてみた」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)」
「海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(2) 黄経」
「海上保安庁水路部の略算式で太陽の視位置(赤経、赤緯)を求める」
「日の出・日の入りの計算」の略算式で太陽の黄経を求めてみた」
「理科年表(暦象年表)における太陽の黄経の意味」
「海上保安庁水路部の略算式はいつまで使えるか? - 太陽の黄経を例に」
海洋情報部の近似式
「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
海洋情報部の近似式の発展(係数の決定法)
「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....」
「水星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方」
天体の位置計算について
「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで」
「天文計算のための天文用語集 - 1」
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