水深2mのプールの見かけの水深は? 屈折と光線追跡
まずタイトルの“答え”を書いておくと
(真上から見た)見かけの水深 = 水深 * 空気の屈折率 / 水の屈折率
です。具体的には
(真上から見た)見かけの水深 = 水深 * 0.75 (水の屈折率≒1.33、空気の屈折率≒1.00)
で、水深2mだったら1.5mです。頭くらいは出るだろうと思って飛び込んだら頭まですっぽり水の中ということになります。
真上から見るんじゃない場合は次の記事にあります。
「水を注いだコップの中のコインは真上に浮き上がって見えるのか?」
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どうでもいいことにやけに一生懸命になっているような記事ですが、理由があります。
簡易分光器はスリットの像を回折格子で反射させてカメラで撮影するというような構造になります。とするとカメラのフォーカスは「スリット・カメラ間距離」つまり「スリット・回折格子間距離」に「回折格子・カメラ(のレンズの主点)間距離」を加えたものに合わせればいいように思えますが実際に撮影してみるとそうはなりません。もっと遠くにフォーカスを合わせる必要があります。これはカメラにどういう像ができるかをExcelでシミュレートしてもそのような結果が得られました。(「撮影のためのDVD簡易分光器の製作 - 設計編」)
どうしてそうなるのかもっと理詰めで考えようと思ったのですがそのままになってしまっていました。最近 竹内淳「高校数学でわかる光とレンズ」 講談社, 2016 を読んでいたら「光軸近似と光線追跡」という章があって、簡易分光器のもう少し理屈のしっかりした設計に応用できるんじゃないかと思いました。
そこで今回は小手試しに簡易分光器の上の問題に一番関係がありそうで、しかもとっつきやすい水面での屈折について検討してみました。
(簡易分光器の方はスリットから来た光は回折格子のところで屈折したのと同じことになるからスリット・回折格子間の見かけの距離が大きくなるんだ、という“読み”です)
申し訳ないですが、光線追跡(光線行列とか光軸近似など....)についての説明については省略させていただきます。
光線追跡についてはググるのであれば、「光線行列」、「ABCD行列」などを検索ワードにすればいいかと思います。大学の先生が書かれたものがたくさん見つかります。
例えば
(京都大学)光物性研究室へようこそ
授業・セミナーのページ
電磁気学C
電磁気学4 2010講義ノート
幾何光学 補足 <== これ!
光線行列はいくつか流儀があるようで、これは光線ベクトルの2番めの要素がnθになっています。下に書いた水・空気界面での屈折の話の光線ベクトルは2番めの要素がただのθになっているやり方です。
何も考えずに見比べたりするとヘンなことになりますので念のため。
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まずこういうのを考えます。屈折率n1が水、屈折率n2が空気のつもりです。最初横向きに図を書いていたのですが、水と空気が左右に分かれてるんじゃおかしいだろうと向きを変えたのでちょっとヘンな感じになっています。
水中のP点から出た光は水と空気の界面Qで屈折します。その結果みかけはR点から光が出たように見えることになります。
以下、PからQで屈折して出てくる光と(水がないものとして)Rから出てくる光が一致する条件からPとRの位置関係を求めます。
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