カテゴリー「太陽と黒点」の8件の記事

2014年6月17日 (火)

太陽黒点の緯度・経度を求める - 実践編 (2)

Excelで天文計算・記事目次とリンク集

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長らく放置してしまいましたが

  「太陽の自転軸
  「黒点の緯度・経度を求める - 北極方向角・日面緯度・日面経度

の続き

  「黒点の緯度・経度を求める - 実践編(1)

の後編です。

準備ができたので本題に入ります。まず画像から黒点の画像上の座標を求めます。
座標軸はふつうx-yなんですが、ここでは三次元で考えているのでy-zになっています。

画像はこれです。
Imgp7320600

上の画像にある四つの黒点を対象にします。

計算をする前に画像を撮影した時刻の太陽の自転軸のデータを
  「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 - 太陽の自転軸
で求めておきます。これらを計算で求める方法についてはまた別の記事で書きたいと思います。

・写真からOを原点とした座標(y,z)を読み取ります。
・太陽の半径を1とするとx=sqrt(1-y^2-z^2)になります。

それぞれの画像上の座標を太陽の中心を原点とし太陽の半径が1.0になるような座標系での座標に変換します。求められた座標は太陽の中心から黒点を見たと考えたときの方向余弦でもあります。

・太陽の北極が天の北極を向くように座標をx軸の周りに北極方向角Pだけ回転します。

これはちょっと注意が必要でじっさいに回転させる角度は北極方向角Pに画像上の北極の方向をプラスしたものにします。

・赤道が太陽の中心にくるように日面緯度B0の分だけ前後に(y軸の周りに)回転します。

これはふつうに座標を回転するだけです。

以上で求めた黒点の座標(方向余弦)から

  緯度 = asin(z')
  経度 = atan2(x',y')+L0

として緯度経度を求めることができます。

Fig_02

同様にこの2日前と5日前の画像からも黒点の緯度経度を求め一覧表にしてみました。

Fig_03

経度は太陽が剛体と考えたときのものです。つまり差動回転の影響は考慮されていません。それからNo.1の黒点は13日は外周ぎりぎりに見えており緯度経度はかなりの誤差があると思われます。

今回は記事を早く書こうと画像からの座標の読み取りをかなり雑にやってしまったこともあり、この表をどう解釈すべきか、というのは書きません、というか書けません (^^;;

じっさいに自分で写真をとって調べてみるとおもしろいと思います。

Excelのファイルはここにあります。
  「ダウンロード Excel_SS10.xls (111.0K)

今回紹介した方法では次のような項目が課題として残っていると思っています。これらについては解決法をまた記事にしていく予定です。

差動回転の影響を考慮した経度がほしい。
 =>差動回転の影響を補正した経度を求める。

得られた座標の精度はどの程度のものか?
 => 読み取り誤差の影響を評価する。
   特に外周に近い黒点の座標は要注意。

カメラはきちんと固定されていたか?振動の影響はないか?
 =>三枚以上の画像から天の北極の方向を求める。

北極の方向の計算方法は適切か?
 =>より厳密な方法で算出する。
   (これは大気差・収差の影響にも関連します)

太陽の中心座標と半径の求め方は適切か?
 => 4点以上の外周の位置から算出する。
    (これは大気差・収差の影響にも関連します)

大気差の影響はないか?
 =>大気差の影響を評価できる計算方法を導入する。

レンズの収差の影響はないか?
 =>収差の影響を考慮した計算方法を導入する。

(しばらく時間をおいて続く)

黒点の緯度・経度を求める - 実践編(1)

Excelで天文計算・記事目次とリンク集

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長らく放置してしまいましたが
  「太陽の自転軸
  「黒点の緯度・経度を求める - 北極方向角・日面緯度・日面経度
の続きの話です。

黒点が太陽面を移動しているのを見るとそのことから太陽の自転速度を求められないかと考えるのですがじつはこれはけっこうむずかしいです。
太陽の自転軸の向きがはっきりわかっていればあんまり難しくありませんが、太陽の自転軸の向きは太陽の自転を観測した結果わかるわけですから「太陽の自転軸の向きが既知として黒点の動きから自転速度を求める」というのは数学的な課題としてはともかく現実的にはあんまり意味がないような気がします。

そこで今回は最初のステップとして太陽の自転軸の向きも自転速度も既知であるとし、黒点の緯度、経度を求めることにします。つまり黒点が太陽面でどういう動きをしているかを調べようというわけです。

太陽の自転軸の向きがわかっているときの黒点の緯度・経度の求め方はすでに上にリンクした記事に書きましたのでじっさいに太陽・黒点を撮影した画像をもとに計算してみます。

手順はこうでした。

・写真からOを原点とした座標(y,z)を読み取ります。
・太陽の半径を1とするとx=sqrt(1-y^2-z^2)になります。
・太陽の北極が天の北極を向くように座標をx軸の周りに北極方向角Pだけ回転します。
・赤道が太陽の中心にくるように日面緯度の分だけ前後に(y軸の周りに)回転します。

こうすると太陽面の経度L0度、緯度0度のところが中心になります。

画像から読み取った黒点の座標(x,y,z)を上記のように回転して得られた黒点の座標を(x',y',z')とすると黒点の緯度・経度は次の式によって求めることができます。

  緯度 = asin(z')
  経度 = atan2(x',y')+L0

ここで一点問題があります。上の考え方では天の北極が上になるように画像を撮影する、あるいは画像を撮影するとき北極の向きがわかっていることを前提にしていますがじっさいになかなかそうはできないと思います。

そこでカメラを固定したまま太陽が左、中央、右になるように3枚の写真を撮影します。黒点の緯度経度は中央にした画像から求めるのですが、左右の太陽の位置を比較して北極の方向を求めます。

IMGP7318.jpg 2013/11/18 10h55m24s
Imgp7318800

IMGP7320.jpg 2013/11/18 10h57m58s
Imgp7320800_3

IMGP7322.jpg 2013/11/18 10h59m58s
Imgp7322800_2

はっきりと画像上の位置を特定しやすい黒点(最初の画像でマークしてあるもの)を選び最初の写真と最後の写真の座標を求めます。この2点を結ぶ直線と直交する向きが(だいたい)天の北極の向きになるはずです。

次に黒点の座標を求めるためには太陽の中心の座標と半径が必要です。
太陽の中心の求め方はいろいろ考えられます。ここでは(あまり適切な方法とは思えないのですが)周上の三点の座標を読み取りその三点を通る円の中心座標を計算するという方法にします。読み取った座標を円の方程式に代入し相互に引き算をすると二元連立一次方程式になりますのでこれを解きます。
Fig_01

以上で準備は整いましたので、今度は黒点の座標から緯度・経度を求めます。
上記のExcelファイルは次の記事にリンクを貼ります。

(「太陽黒点の緯度・経度を求める - 実践編 (2)」に続く)

2014年5月29日 (木)

色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....

ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し
ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?
色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
あたりの続きの話です。

分光器でλの波長の光とλ+Δλの波長の光を識別できたときその分光器の能力=色分解能はλ/Δλで表されるということを書きました。


ゼーマン効果は630.25nmの波長の吸収線に対して4,000Gaussの磁場で0.02nmくらいの分岐を引き起こすようですが、これを観測するためには630.25/0.02≒30,000くらいの色分解能が必要ということになります。

一方プリズムの色分解能はプリズムの一辺の長さに比例します。そして30,000の色分解能を実現するためには(プリズムの材質にもよりますが)一辺が800mmつまり80cmくらいのものが必要になるようです。

こんなものをアマチュアが入手するということはできない相談でしょうし仮に入手できたとしても80cmもある辺を有効に使うということはほとんど不可能でしょう。さらにその前にそんなものどこに置く?というのがあります (^^;;

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でもこんなもの(あるいはもっと色分解能が高いスゴイもの)が天文台だったら置いてあるというのもにわかには信じられない話です。

お気づきの方も多いと思いますがこういう高い色分解能を必要とする分光器にはプリズムは使われていません。回折格子が使われているのです。

回折格子の色分解能は非常に高いです。最高級の回折格子はなんと1,000,000を超える色分解能をもっているそうです。

つまり630.2500[nm]の波長の光と630.2506[nm]の波長の光が重なっていてもその両者を識別できるわけです。

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プリズムの色解像度は

  プリズムの一辺の長さ * dn/dλ  (「dn/dλ」は屈折率を波長で微分したもの)

であることを書きましたが、一方回折格子の色解像度の限界は

  m * N

で表されるそうです(この理由は国立天文台 - 誰でもできる高分散分光器の設計が詳しいです)

mは回折の次数、そしてNは格子数です。一次の回折を使うとしても1mmあたり600本の格子があり回折格子のサイズが50mmあれば格子はトータル30,000あるわけですからその回折格子の色解像度も30,000になります。

この30,000という色解像度は上に書いたように黒点でのゼーマン効果を識別するために最低必要と思われる色解像度です。

そして1mmあたり600本の格子というのは標準的な回折格子の格子密度ですしサイズが50mmの回折格子はそれほど高価なものではありません。100mmの対物レンズなんかよりはるかに入手しやすいお値段です。

さらに二次の回折を使えば色解像度は二倍の60,000になります。

ということは(回折格子の能力だけ考えれば)アマチュアにもゼーマン効果を観測することがぜったい不可能なことではないように思えます。

ただこの色解像度をもってしても太陽の自転によるドップラー効果はきびしいものがありそうです。どっち向きに回転しているかくらいはわかるかもしれませんが....

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何度も書きますが太陽の自転によるドップラー効果の波長のずれや太陽磁場に起因するゼーマン効果による波長の分離の具体的な数値については自信がありません。
ほんとに測定したいと思われる方はそういうものや色分解能について新たにご自身で計算しなおしてから取り組むことをお勧めします。

それから記事を書くのに使った参考書のリストがどこかに行ってしまいました。
見つかったら記事に追加しておきます。

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この記事についてクリちゃんさんから太陽の自転によって生じるドップラー効果の影響を画像化した資料があるとのコメントをいただきましたので紹介しておきます。

  「明星大学理工学部物理学科 - 伴場由美 - 卒業研究 - シーロスタットを用いた太陽の分光観測による速度場解析

こういう観測には色分解能の高い分光装置が必要ですがこの論文ではエシェル分光器を使ったと書いてあります。こういう観測装置については

  「京都大学理学研究科宇宙物理学教室 - 岩室 史英 - 観測天文学 - 観測装置の種類

などを参考にしていただければと思います。

(2014.06.27)

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簡易分光器で撮影したフラウンホーファー線(の一部)です。
F線とそれよりちょっと波長が長いところを抜き出してあります。
これで色分解能は2000程度でしょうか。
Imgp7798b_2
太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線より)


まとめ記事
  
簡易分光器 - 作り方・使い方のまとめとリンク集

  「DVD簡易分光器の自作とトラブルシューティング
  「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による

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関連

  ゼーマン効果を利用した太陽磁場測定は簡易分光器でできるか?

  「簡易分光器の作り方と反省点 - DVD-ROM使用
  「DVD簡易分光器の改良 (1)
  「DVD簡易分光器の改良 (2) - 構造・作り方
  「DVD簡易分光器の改良 (3) - 仮組立
  「DVD簡易分光器の改良 (4) - 組み立て
  「簡易分光器にDVD-ROMを使うとゴーストが出る理由
  DVD簡易分光器のスリット幅と色分解能の関係
  「DVD簡易分光器の波長と画像位置の関係
  「
簡易分光器の作り方 - 回折格子をどうする

  「デジカメの分光感度特性と白熱電球のスペクトル
  「
デジカメの分光感度特性補正の試み - スペクトル画像のグラフ化
  「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法
  「
DVD簡易分光器の色分解能を岡山天体物理観測所と比較する

  「
DVDで作る簡易分光計 - 蛍光灯の分光スペクトル」 (三波長型蛍光灯)
  「
蛍光灯でもこれだけ違うスペクトル - 自作DVD分光器

  「
DVDで作る簡易分光器 - 水銀灯の分光スペクトル

  「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル

  「ナトリウムランプのスペクトルの詳細 - 改良版DVD簡易分光器
  「ナトリウム炎色反応のスペクトル(二つのD線)
  「D線が存在しない高圧ナトリウムランプのスペクトル - DVD簡易分光器
  「自作DVD分光器で調べるナトリウムランプのスペクトル

  「メタルハライドランプのスペクトル - DVD簡易分光器

  半導体レーザー(レーザーポインター)のスペクトル

  「太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線
  「フラウンホーファー線の画像が画期的に改善! - 太陽光のスペクトル
  DVD簡易分光器で見るフラウンホーファー線(太陽光のスペクトル)
  「フラウンホーファー線 - DVD簡易分光器による太陽光のスペクトル

  「光害カットフィルターLPS-P2の分光特性(1) - DVD自作分光器

  「色分解能 (3)」 色分解能 (1)」、「色分解能 (2)」、「色分解能 (2)」)
  「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
  「
色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
  「
ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?
  「
ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し
  「
Hαフィルターを使わずにHα写真を撮る方法

  「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)
  「
過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)

参考
  「
国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件
  
Welcome to my homepage. - DVD分光器
  「星は空の彼方、月よりも遠く
    - 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
    - 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)

  「ラジオペンチ - DVDのメディアで簡易分光器を作る-その1

  「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
  「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方

  「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
  「国立天文台 - 分光宇宙アルバム
  「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~

  「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位
  「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識
  「
岩崎電気 - ランプ光源情報
  「
ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ

  国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014

2014年5月27日 (火)

色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....

これまで
  「ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し
  「ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?
の二つの記事を書きました。そしていずれも光のわずかな波長の差を測定できるかがポイントとなります。
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天文に興味のある方で(望遠鏡の)「分解能」という言葉をご存じない方はいらっしゃらないでしょう。

どれだけ近接した天体を分離して識別できるかという意味で使われます。この意味からとうぜん単位は角度(ふつう秒)になります。

定義は他にもあって例えば人間の目の分解能「視力」であればが次のように定義されます。

(識別できる最小の)直径:円弧の幅:輪の開いている幅=5:1:1のサイズである円環(ランドルト環)の分単位で表した開いている幅の視角の逆数

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天体の観測をするのには分解能が高いほうがいいに決まっています。望遠鏡の分解能が何で決まるかというと対物レンズ(対物鏡)の口径で決まります。

ここでは「識別できる」ということばの定義があいまいですが、「識別できる」ということばの意味をどう定義したとしても

  分解能 ∝ 1 / 対物レンズの口径

という関係はかわりません。

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分光器にも「どれだけ細かい波長の差を識別できるか」という意味の分解能という概念があります。

この分解能、つまり色分解能

  λ / Δλ

で表されるそうです。つまりある分光器がぎりぎり500nmの波長と502nmの波長の光を識別できたとするとこの分光器の分解能は 500 / (502 - 500 ) = 250 ということになります。

じゃあ分光器の分解能は何で決まるか?
プリズムの場合はこんな式で表されます

  b * dn/dλ

ここでbはプリズムの一辺の長さ、dn/dλはプリズムの波長に対する屈折率を波長で微分したものです。

dn/dλは「物性」ですから好き勝手にいじれるものではありません。例えば石英ガラスの場合だと理科年表で見ると500nmくらいの波長に対しては

  dn/dλ = 4e-05[1/nm]

くらいのものでしょう。

  
一辺が10mmのプリズムだと500nmの波長の光に対する色分解能400ということになります。

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例えばゼーマン効果を観測するために必要な色解像度は前回の記事の鉄の吸収線の例だと

  630 / 0.02 = 31,500

ということになります。

上に書いた式からプリズムでこの色解像度を実現するためには一辺が800mm近いものが必要ということになります (^^)

言うまでもないことですが、上の文章の意味は

  30,000程度の色解像度を実現するためには最低でも一辺800mmのプリズムが必要

ということであって

  一辺800mmのプリズムがあれば必ず30,000程度の色解像度が実現できる

という意味ではありません。これは対物レンズの(空間)解像度とおんなじです。

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なぜ色解像度はプリズムの一辺の長さに比例するのか?

光はプリズムで屈折するのですが波長によって屈折率は違います。つまりプリズムから出て行く光は波長によって微妙に出射角が違ってきます。

波長の差を識別する、と書きましたが実際はこの出射角の差を識別していると言えると思います。これはレンズの空間解像度と同じようなものです。
とすればレンズの解像度がレンズの直径に依存するようにプリズムの色解像度がプリズムの大きさに依存するのもとうぜんという気がしないでもないです。

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さて一辺が800mmのプリズムというのはとても入手できそうにありません。
そこで次の記事「色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....」に続きます。

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DVDで作る簡易分光器あたりだと現実問題として色分解能はスリットで決まると思っていた方がよさそうです。

簡易分光器で撮影したナトリウムD線です。これで色分解能は1000強と言ったところでしょうか。
Imgp7665_682d691000
ナトリウム炎色反応のスペクトル(二つのD線)より)


まとめ記事
  
DVD簡易分光器の自作とトラブルシューティング
  「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による

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色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
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ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?
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ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?

太陽の黒点の部分には強い磁場が発生しているそうです。天文学的遠距離にある太陽に磁場があるのかないのか、あったとしてその強さや向きはどうしてわかるかというとゼーマン効果が観測されたから、という話があります。

このゼーマン効果というのは
  「Wikipedia - ゼーマン効果
に説明があります。私も専門家じゃないのでこの説明が正しいかどうかは保証できませんが要するに磁場があるとスペクトル線が分裂する現象をいいます。

太陽光のスペクトルを見るとフラウンホーファー線といってところどころに黒い線(=吸収線)がありますが、これも磁場の強いところ、つまり黒点の近辺だと分裂して見えるということです。ゼーマン効果はスペクトル線の分裂以外の現象も引き起こします。詳しくは上記Wikipediaの記事で.... (^^;;

そこで疑問に思うのは「この現象はアマチュアにも観測できるのか」つまり「太陽磁場の観測はアマチュアでもできるのか」という点です。

  ちょっと本気になっています。
    「
ゼーマン効果を利用した太陽磁場測定は簡易分光器でできるか?

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この問題は
  
1.ゼーマン効果によるスペクトル線の分裂とはいうけれど
    どのくらいの波長の幅で分裂するのか?
  
2.そしてそれはアマチュアの機材で観測できるのか?
の二つを調べる必要があります。

上記のWikipediaの記事には分裂するとは書いてあるのですが、どれだけ分裂するかは書いてありません。

分裂幅を計算する式なんかも見つけたのですが、それよりもっといいものを見つけました。実際にゼーマン効果による吸収線の分裂を撮影した写真で波長がわかるものがあったのです。
  「裳華房 - The Sun

ここにある画像を見ると630.250nmの鉄の吸収線が630.151nm629.780nmに分裂しているようです。
これならどうにかなるのかも、と思ったのですが630.250nm、630.151nm、629.780nmの三つとも本来の鉄の吸収線のようです (^^;;
もう一度画像を見ると大気の吸収線が細い線になっているに比較して上の三つの吸収線がふくらんでいますがこれがゼーマン効果によるもののようです。

資料(恒星社厚生閣「天文・宇宙の辞典」他)で見た計算式をもとに計算したのですが、例えば鉄の吸収線630.250nmに対し4,000Gaussの磁場があるときのゼーマン効果による分裂の波長の差は0.019nmくらいしかないようです(この計算にはぜんぜん自信がないです。写真とくらべてもこんなものだろう、という程度です。こういうことをちゃんと調べたい方はご自身で計算された方がいいです)

(以上が正しいと仮定すると)
630.250nmの吸収線の0.02nmの波長の違いが識別できるか否か、ということがテーマになります。そうとうにきびしい課題です (^^;;

それからスペクトル線(輝線)が分裂するから吸収線も分裂するということになるのかというこも考えなければいけないと思うのですが、実際に吸収線は分裂しているわけですし、輝線=エネルギーが高い状態から低い状態への移行、吸収線=エネルギーが低い状態から高い状態への移行と考えればそうなりそうなのでここも深く考えないことにします (^^;;

いずれにしても手持ちのあるいは入手可能な機材で観測可能かは上の波長の変化を捉えることができる能力(色分解能)があるかどうかということになります。

先日書いた「ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し」でも同じ課題(?)がありました。そこで色分解能というものについて調べてみることにします。

    「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....

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以下ゼーマン効果にまつわるどうでもいい話です。

シュレディンガー音頭」のページの下の方にボタンがありますが、ゼーマン効果は「中級編」で出てきます。上級編」になるとさらに異常ゼーマン効果も出てきます。異常ゼーマン効果がゼーマン効果とどこが違うかは「解説」にあります。

これ、二十年近く前のものなんですが現代版もあります。MMD版です。歌っているのはもちろん初音ミクさんです。
  
【MMD】シュレディンガー音頭【UTAU】

これマスターしたら量子力学は完璧
量子力学をマスターしたら踊りは完璧ですね (^^)

そういえばこんなのも....

  「Wikipedia - シュレジンガー音頭

参考記事

 さん
    「太陽の観測 2013-06-01
 ほよほよさん
  
  「太陽双極子磁場の反転

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関連

  ゼーマン効果を利用した太陽磁場測定は簡易分光器でできるか?

  「色分解能 (3)」 色分解能 (1)」、「色分解能 (2)」、「色分解能 (2)」)
  「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
  「
色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
  「
ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?
  「
ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し
  「
Hαフィルターを使わずにHα写真を撮る方法

  「DVDで作る簡易分光計 - 蛍光灯の分光スペクトル
  「
DVDで作る簡易分光器 - 水銀灯の分光スペクトル
  DVD簡易分光器で見るフラウンホーファー線(太陽光のスペクトル)
  「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル

  「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)
  「
過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)

参考
  「
国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件
  
Welcome to my homepage. - DVD分光器
  「星は空の彼方、月よりも遠く
     - 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)
  「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
  国立天文台編 「理科年表」 丸善出版、2014

2014年5月13日 (火)

ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し

クリちゃんさんから太陽の自転によって生じるドップラー効果の影響を画像化した資料があるとのコメントをいただきましたので紹介しておきます。

  「明星大学理工学部物理学科 - 伴場由美 - 卒業研究 - シーロスタットを用いた太陽の分光観測による速度場解析

以下にあるようにこういう観測には色分解能の高い分光装置が必要です。この論文ではエシェル分光器を使ったと書いてありますが、こういう観測装置については

  「京都大学理学研究科宇宙物理学教室 - 岩室 史英 - 観測天文学 - 観測装置の種類

などを参考にしていただければと思います。

(2014.06.27)
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天文計算関連記事の目次は「Excelで天文計算・記事目次とリンク集 」にあります。

情報通信研究機構(NICT)の一般公開に行ったことがあります。宇宙天気情報センターにもおじゃましました。

Imgp7533580x

あれ、写真を見ると宇宙天気予報センターって書いてありますね (^^;;

まだISON彗星が健在なときで展示の目玉(?)になってました。

ここで説明員(研究者?)の方からいろいろお話をうかがえたのですが、太陽の自転と黒点の移動速度の関係の話しになったとき(具体的にどう話されたかは忘れましたが「太陽というのはガスのかたまりでゆらゆらしているわけだからそういうことはあんまり真剣に考えないほうがいい」みたいな意味のことを言われました。きっと私が天体の位置計算をするみたいな感じで質問してしまったせいでしょう (^^;;

太陽の自転速度というとすぐに黒点の動きから調べるということになるわけで、このブログの記事もそういう流れで書いていこうとしているわけですが、じつは直接的に太陽の自転速度(正確には太陽表面のガスの動く速度)を測定する方法があります。

太陽の東側は地球に向かって動いています。一方西側は地球から遠ざかるように動いています。したがってドップラー効果の違いが生じるはずです。ですからこのドップラー効果による波長の変化を調べることによって太陽の自転速度を知ることができるはずです。

具体的にどの程度のドップラー効果が生じるのか計算してみました。
(あんまり自信がないので今回はExcelのファイルはありません。それからちゃんとやるんだったら太陽と地球の相対速度も考慮すべきでしょう。そっちの影響の方が大きいかもしれません。つまり下の計算は太陽と地球の相対速度がゼロであるという乱暴な仮定を前提としています。ただ太陽の西端と東端で(自転の影響を除くと)地球との相対速度は違わないのでオーダー的には下記の計算でもそんなにヘンな結果にはなっていないと思います)
Doppler_1


計算式はこんなのを使っています。
Doppler_2

太陽の自転速度は光速にくらべたら微々たるものですからドップラーシフトはごくわずかのものです。

630.24nmの波長の光は地球から見ると東端と西端で波長が630.254nmあるいは630.246nmと変化するようです。この差を測定できれば太陽の自転速度がわかることになります。

じつはこれと同じような話があります。
  「ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?

現実にこの程度の差を検出することができるのかということは「色分解能」というテーマで別の記事として書きたいと思います。

  「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....

参考
  「Wikipedia - ドップラー効果
    光のドップラー効果についての説明があります。

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関連

  「色分解能 (3)」 色分解能 (1)」、「色分解能 (2)」、「色分解能 (2)」)
  「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
  「
色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....
  「
ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?
  「
ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し
  「
Hαフィルターを使わずにHα写真を撮る方法

  「DVDで作る簡易分光計 - 蛍光灯の分光スペクトル
  「
DVDで作る簡易分光器 - 水銀灯の分光スペクトル
  DVD簡易分光器で見るフラウンホーファー線(太陽光のスペクトル)
  「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル

  「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)
  「
過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)

参考
  「
国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件
  
Welcome to my homepage. - DVD分光器
  「星は空の彼方、月よりも遠く
     - 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)
  「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
  国立天文台編 「理科年表」 丸善出版、2014

2014年1月29日 (水)

黒点の緯度・経度を求める - 北極方向角・日面緯度・日面経度

Excelで天文計算・記事目次とリンク集

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太陽の自転軸 」の続きの話です。
今回は理論編(?)で実際に緯度経度を求めた例は「黒点の緯度・経度を求める - 実践編(1)」にあります。

例えば太陽の自転速度を知ろうと考え黒点が太陽面をどのように移動しているか__つまり黒点のある場所の太陽面での経度・緯度__調べようとすると太陽の自転軸がどのように傾いているかを知っていなければなりません。

太陽の自転軸の向きは赤経・赤緯で表されることを書きましたが実際は地球から見た自転軸の傾きの様子で表されることが多いです。そしてそれが

  地球から見た自転軸の向き(P、天文年鑑では「北極方向角」と表現)
  太陽面の中点の)日面緯度(B0)
  太陽面の中点の)日面経度(L0)

の三つです。これらは「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 」に「太陽の自転軸 」で調べることができ、それぞれがどういう意味かも書いてあるのですがここでもざっと書いておきます。

2

まず太陽を見ると太陽はまんまるに見えますからその中心があります。これがOです。一方太陽に緯度・経度があるとすれば経度=0度、緯度=0度の点があるはずです。これはSになります。

太陽を見たとき太陽の北極と見かけの太陽の中心を結ぶ直線が天の北極と見かけの太陽の中心を結ぶ直線となす角が地球から見た自転軸の向き(P、北極方向角)です。図にあるように左回りに測ります。

図を見ると太陽の見かけの中心は太陽面のある経度・緯度のところにあります。上の図だと緯度が30度、経度が40度(くらい)になっています。これが日面緯度(B0)であり日面経度(L0)です。

太陽の写真から黒点の緯度を求めるときは次のようにします(座標系は天の北極をz軸、地球の向きをx軸、それらに直交するy軸を右向き(西向き)にとります)

・写真からOを原点とした座標(y,z)を読み取ります。
・太陽の半径を1とするとx=sqrt(1-y^2-z^2)になります。
・太陽の北極が天の北極を向くように座標をx軸の周りに北極方向角Pだけ回転します。
・赤道が太陽の中心にくるように日面緯度の分だけ前後に(y軸の周りに)回転します。

こうすると太陽面の経度L0度、緯度0度のところが中心になります。

画像から読み取った黒点の座標(x,y,z)を上記のように回転して得られた黒点の座標を(x',y',z')とすると黒点の緯度・経度は次の式によって求めることができます。

  緯度 = asin(z')
  経度 = atan2(x',y')+L0

ところで太陽の緯度が0度のとこがどこかというのはすぐにわかるわけですが、経度が0度のところがどこかと聞かれてもすぐにはわかりません。

国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 」のこよみ用語解説によれば

日面経度は1854年1月1日グリニジ平均正午において黄道面に対する太陽の赤道面の昇交点を通る日面子午線を経度の原点としたものです。

太陽の自転周期も気になりますがこれについては

地球に対する自転の周期は27.2753日、恒星に対する周期は25.38日になります(カリントン周期:太陽緯度±16度付近)。

と定義されています。
どっちもいろいろと疑問の湧いてくる定義ですが、ひとまずこのことを前提にして先に進みます。

なお結果だけ知りたければこんなものもあるようです。ご参考まで。

  「Helio Ver.3.2


(「黒点の緯度・経度を求める - 実践編(1)」に続く)

2014年1月23日 (木)

太陽の自転軸

Excelで天文計算・記事目次とリンク集

太陽の自転速度を観測から求めようとすると誰でも思いつくのは黒点の移動速度を調べる方法でしょう。黒点は太陽面にはりついているという前提があることになりますが、これはこれであやしい__根拠がない__ようにも思えます。太陽というのは一言で言えばガスでしょうから太陽面に黒点がはりついているというのはヘンな話に思えます。
じつは直接自転速度を測る方法もないことはないです。太陽の回転を考えると左側は地球に向かって運動しており右側は遠ざかるように運動しています。太陽の左側と右側からくる光のドップラー効果の影響の違いを測れば自転速度がわかるはずです。原理的には簡単でもこういうことを調べるには大掛かりな機材が必要ですが、これにしても太陽表面のガスの移動速度を調べているわけでそれが太陽の自転速度と一致するかと聞かれると素直にイエスとは答えられません。
もっと言えば(ガスの塊である)太陽の自転速度を考えるなんてナンセンスとも言えます。

そうは言っても黒点は毎日左から右に少しずつ移動して行きますのでここではこれを太陽の自転を示していると考えることにします。詳しく黒点の移動の様子を調べれば黒点相互の位置関係の変化から太陽面のガスの動きもわかってくるかもしれません。

太陽は真球と考えてよいとされていますから黒点の動きからその移動速度(角速度)を求めるのは比較的容易なはずですが一点問題があります。それは太陽の自転軸はどちらの方向を向いているかです。

もし太陽の自転軸が地球の公転面と直交していれば黒点は直線的に移動していくはずですし、自転軸が地球の方向を向いていれば黒点は円弧を描いて動いていきます。

実際に観測してみると直線に近い楕円弧を描いているように見えます。つまり少しだけ(公転面に対して)傾いているようです。

Photo

さてでは自転軸の向きというのはどう定義されるのかというのが問題になります。私は最初これがわからずピントのはずれたことをやっていました。

国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 」に「太陽の自転軸 」というのがあるのでこれで調べられそうです。しかしここでわかるのは地球から見た自転軸の向き(P、天文年鑑では「北極方向角」という用語を使っています)、太陽面の中点の)日面緯度(B0)、太陽面の中点の)日面経度(L0)の三つです。この三つは確かに自転軸の向きで決まる値なのですが自転軸の向きそのものを表しているわけではありません。
じつは自転軸の向きはその言葉のとおり自転軸が向いている方向の天球上の位置で表されます。つまり赤経・赤緯で表されます。これについては「暦計算室 - こよみ用語解説 」にも書かれており

  自転軸の方向はおよそ赤経19h5m、赤緯+63.9°です。

となっています。参考までに書いておくとこの位置はりゅう座になります。概略の位置としてはこと座のベガと北極星の中間点くらいと覚えておくといいかもしれません。

例えば最初に例をあげた黒点から太陽の自転速度を求めるようなことはこれらをもとにして考えていくことになります。
なお、上の文章では「およそ」となっています。これ以上詳しい値は国立天文台のウェブサイトや理科年表ではわからないようですが「NASA ジェット推進研究所 Horizons 」で知ることができます。ただこのサイトの値は座標系が違う(J2000.0)ので注意が必要です。

黒点の緯度・経度を求める 」に続く
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