カテゴリー「天文計算の本」の3件の記事

2014年5月31日 (土)

長谷川一郎「(新装改訂版)天文計算入門」恒星社厚生閣

このブログは、何か計算したいものがあったときそれをどうやって計算するかをExcelの具体的な計算例で示すことを目的にしています(「Excelで天文計算・記事目次とリンク集 」)

中には天文計算を系統的に勉強したいという方もいらっしゃると思いますのでそういう方向けにそういう分野の書籍を紹介して行きたいと思います。いわゆる天文書全般ということではなく天文計算つまり位置計算・軌道計算などに限ったものになります。ただ天体力学の本はいくらかとりあげるかもしれません。また天文書ではなくても物理学(力学)や数学(解析学、線形代数、数値計算)なども参考になるようなものがあれば取り上げたいと思っています。

単にこんな本があります、だけではあんまり役にたたないというか書籍の紹介サイトを見れば済む話なので私の視点で感想など付け加えておきます。ただあくまでも私の感想なのでできるだけ自分で手にとって内容を確認されることをお勧めします。
専門家の書評ではなく実際に勉強している初学者の感想ですからかえって役に立つこともあるかなあと思っています。

  「天文計算の本

なお探せば図書館でもけっこういろんな本があります。例えば東京ですと自分の住んでいるところの近くの図書館になくても同じ区内の図書館にあればすぐに取り寄せてもらえますし、東京都内の区立・市町村立の図書館にあるものであれば(ちょっと時間がかかりますが)取り寄せが可能です。

  「東京都立図書館統合検索

自分のお住まいのところの図書館のシステムがどうなっているか調べておくと重宝するかもしれません。

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この記事で取り上げた

長谷川一郎「天体の位置天文計算入門」恒星社厚生閣


前回記事にしたと

長沢工「天体の位置計算」地人書館

とはいろいろな意味で対照的な本です。

天体の位置計算」は
1. 基本的にマトリックス演算を使っている
2. 天体の位置計算に限定し詳細に説明されている
のに対し「天文計算入門」は
1. 球面三角がベース
2. 多種多様な天文計算を扱っている
という違いがあります。

マトリックス演算か球面三角かというのはどちらがいいというよりどういう計算手段を使うのかというところに依存するところが大きいようですし、趣味・好みという面も強いでしょう。
別に長沢工氏がマトリックス派で長谷川一郎氏が球面三角派というようなことではなくて長谷川一郎氏の著書でも「天体軌道論」はマトリックス演算を主にしてあったと思います。

この種の本に共通する問題として内容が古いということが上げられます。この本ももともとの出版年が1978年、新装改訂版についても1996年ですからしようがないのですが。

時刻とか座標についてはやっぱり

福島登志夫編「天体の位置と運動」日本評論社

など最新のものに目を通しておいた方がよさそうです。

本書の構成を目次にしたがって紹介しておきます。内容は計算例が多くそこはとても役にたつと思います。

第1章 三角関数
第2章 平面三角法
第3章 球面三角法
第4章 いろいろな座標系
第5章 年・月・日と時
第6章 星の視位置
第7章 星の距離と運動
第8章 日月食とえんぺい(星食)
第9章 二体問題
第10章 太陽系内天体の位置推算
第11章 軌道決定
第12章 応用数学の活用
補講

日月食の予測はベッセル法ですが食要素を天体暦で調べておく必要があります。
軌道決定はバイサラ法です。

なおこの書籍に限らず例えば方向余弦から赤経を求めるとき
  α=atan(M/L)

としてLの符号から象限を決めるのですがExcelであれば

  α=atan2(L,M)

とすれば済む話しなのでご参考まで。

2014年5月17日 (土)

「プラトン」か「プラトー」か? - 月のクレーターのこと

月の地形には名前が付いています。

例えばA.は「雨の海」、その左上(北西)にある“湾”になったようなところB.は「虹の入江」です。

雨の海A.の右上(北東)にクレータ C.があります。全部が全部そうなんだか知りませんがクレータには“有名人”の名前が付けられています。例えば「雨の海」の下(南)にある立派なクレータ D.はポーランドの(とわざわざ断るまでもない)天文学者「コペルニクス」の名前で呼ばれます。

C.のクレータもひときわ目立ちますのでそれ相応の“一角の人物”の名前が付けられているはずです。
実際このクレータはギリシャの哲学者「プラトン」の名前を持っています。
天文年鑑2014」で言うと月面図の第2象限の21番です。
Imgp0457458463a

私はこれで“解決済み”なんですが、このクレータのことを「プラトー」と呼ぶ方がけっこういらっしゃいます。

なぜ「プラトン」のことを「プラトー」という方が多いのか?

天文年鑑2014」を見てみます。「プラトン」の左側にこのクレータの名前を“横文字”で書いてあるのですがその綴りは“Platon”ではなく“Plato”になっているのです。おそらくこれが「プラトー」派が多い理由の一つだと思います。

ところでこの記事を読んで私と逆の意見・感想を持たれる方__つまり「プラトーに決まっているではないか、なぜプラトンと言うのか、天文年鑑はけしからん」と考えられる方__もいらっしゃるような気もします。
このことについては続きの中で書く予定です。結論はまだ出ません。

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図書館の“天文”のコーナーに行ってそれらしい本を片っ端から引っ張り出しC.のクレータのことをどう書いているか調べてみました。

リストは出版年(注1)の順(降順)に並べてあります。

著者・編者・監修者 書名 出版社 出版年 表記 備考
長谷部信行・
桜井邦明編
人類の夢を育む天体「月」
月探査機かぐやの成果に立ちて
恒星社厚生閣 2013 プラトン(Plato)
天文年鑑 2014 誠文堂新光社 2013 Plato | プラトン
相馬充監修 月のこよみ2013 誠文堂新光社 2012 プラトン
日本語版監修
渡部潤一
ビジュアル宇宙大図鑑 日経ナショナルジオグラフィック社 2012 プラトン
月の撮り方
研究会
月の撮り方 誠文堂新光社 2011 プラトン
白尾元理 月の地形-ウォッチングガイド 誠文堂新光社 2009 プラトー 注2
川村晶編 組立天体望遠鏡15倍 星の手帖社 2006 プラトー
A. ルークル 月面ウォッチング―エリア別ガイドマップ 地人書館 2004 未確認
藤井旭 ビジュアル版天体観測図鑑 河出書房新社 2000 プラトー
えびなみつる はじめての天体観測 誠文堂新光社 1999 プラトー
天文年鑑 1995 誠文堂新光社 1994 プラトン 注3
天文年鑑 1994 誠文堂新光社 1993 未確認
天文年鑑 1990 誠文堂新光社 1989 プラトー
天文の事典 平凡社 1987 プラトン
天文学辞典 地人書館 1986 プラトー
改訂版天文と宇宙の辞典 恒星社厚生閣 1983 プラトー
世界科学大事典 講談社 1979 プラトー

注1 初版の出版日にすればよかったのですがそうなっていないものがあるかも。
   こんど図書館に行ったら調べてちゃんとします。

注2 サダルテミスさんに教えていただきました。

注3 前書きに次のような記述があります。

今年度版から月面図の配置を変えて使いやすくし、月面地名について一貫した読み方を採用した。読者諸氏からのご批判、ご忠言を期待する。

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続きを書く計画があります。

2014年2月11日 (火)

長沢工「天体の位置計算」地人書館

このブログは、何か計算したいものがあったときそれをどうやって計算するかをExcelの具体的な計算例で示すことを目的にしています(「恒星の位置(赤経・赤緯・高度・方位)計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで 」、「Excelで天文計算・記事目次とリンク集 」)

中には天文計算を系統的に勉強したいという方もいらっしゃると思いますのでそういう方向けにそういう分野の書籍を紹介して行きたいと思います。いわゆる天文書全般ということではなく天文計算つまり位置計算・軌道計算などに限ったものになります。ただ天体力学の本はいくらかとりあげるかもしれません。また天文書ではなくても物理学(力学)や数学(解析学、線形代数、数値計算)なども参考になるようなものがあれば取り上げたいと思っています。

単にこんな本があります、だけではあんまり役にたたないというか書籍の紹介サイトを見れば済む話なので私の視点で感想など付け加えておきます。ただあくまでも私の感想なのでできるだけ自分で手にとって内容を確認されることをお勧めします。
専門家の書評ではなく実際に勉強している初学者の感想ですからかえって役に立つこともあるかなあと思っています。

  「天文計算の本

なお探せば図書館でもけっこういろんな本があります。例えば東京ですと自分の住んでいるところの近くの図書館になくても同じ区内の図書館にあればすぐに取り寄せてもらえますし、東京都内の区立・市町村立の図書館にあるものであれば(ちょっと時間がかかりますが)取り寄せが可能です。

  「東京都立図書館統合検索

自分のお住まいのところの図書館のシステムがどうなっているか調べておくと重宝するかもしれません。

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まずはじめに

長沢工「天体の位置計算」地人書館

です。この本はもう位置計算に関してはバイブル的な本なのでわざわざ取り上げる必要はないと思いますが、もしかしてご存じない方もいらっしゃるかもしれないと思い最初にとりあげました。

恒星の位置(赤経・赤緯・高度・方位)計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで 」の表もこの本を参考にして作りました。

内容はとてもわかりやすくしかも網羅的です。半分くらいのページが恒星の位置の計算__つまり星表位置からとうやって見かけの位置を求めるか__とそのための準備に費やされています。ここまで丁寧に説明した本はあんまり見たことがありません。

またこの書籍は球面三角法ではなく行列(マトリックス)演算を主に使っています。どちらがいいということはないのでしょうが行列演算は計算量は多いものの考え方が単純ですしそのための関数がExcelにありますのでExcelで計算を実行するのであれば便利だと思います。とは言っても正弦定理と余弦定理くらいは知っていた方がいいと思いますが (^^;;

この書籍の欠点を無理やりあげるとすれば内容が古いことでしょうか。これは1981年出版のものなので仕方がないのですが、もちろん古いと言っても計算法が古いとかそういうことではなく使われているデータやパラメータが古いというだけです。例えば地球時じゃなくて暦表時だとか東京測地系だとかまた細かい話しになると年周光行差に関して

「通常の星表には、このe項の量を含ませたものを恒星の位置として示すことになっている」

とありますが(J2000.0に基づく)最近の星表ではe項は除いてあるようです。

まあいずれにしてもアマチュア的にはほとんど取るに足らない話ですし、このくらいしか気になるところはないということでもあります。


構成(目次)は次のようになっています。

1. はじめに
2. 天球座標
3. 恒星位置のずれ
4. いろいろの時刻系
5. 2体問題による惑星、彗星などの位置の概算
6. 地球上の観測点の位置
7. 2体問題からの発展
8. おわりに

「3. 恒星位置のずれ」で扱われているものには次のようなものがあります。

  固有運動、歳差、章動、視差、光行差(年周光行差、日周光行差)、極運動、大気差

(アマチュアの)実用的には十分な内容です。そしてそれぞれに厳密な計算方法とそれを簡略化したものを示してあります。簡略式は制約はあるものの少ない計算量で求めることができるという意味ですからExcelでやるのだったら厳密な計算方法を使った方がいいかもしれません。精度が必要ないとしても一々制約を満たしているかと考えるのは面倒ですし計算はExcelがやるわけでいくら複雑でも計算に手間暇がかかるわけでもありませんから。

それから「7. 2体問題からの発展」には人工衛星の位置の計算法とともに月や惑星の海上保安庁水路部による略算式があります。この計算式は補間式ではなく理論的に(つまり摂動を考慮して)求められたもののようです。ひょっとしたら今でも使えるのかもしれませんがこれについては後身の海上保安庁海洋情報部の計算式というのを記事にしましたので参考にしていただければと思います。例えば月に関しては

  「月の赤経・赤緯・地心距離を求める(海洋情報部の計算式)

です。

なおこの書籍に限らず例えば方向余弦から赤緯を求めるとき
  α=atan(M/L)

としてLの符号から象限を決めるのですがExcelであれば

  α=atan2(L,M)

とすれば済む話しなのでご参考まで。
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