前記事「Amazonで買った400000V高電圧発生モジュールの出力電圧」 で「パッシェンの法則」についてふれました。こまかい話は後回しにして電極間距離から放電開始電圧を求めるグラフを先に示します。
注意すべき点
パッシェンの法則の要点は
放電開始電圧は「気体の圧力と電極間距離の積( p*d )」の関数である。
ということで、ここでは具体的な形としては
Vs = B * p*d / ln(A * p*d / ln( 1 + 1/γ))
を使っています。
パッシェンの法則・上式の導出については
藤田文太郎「放電管」(共立全書) 共立出版, 1954
などにあります。
「標準球ギャップの火花電圧」は
静電気学会「静電気ハンドブック」オーム社, 1981
にある値を使いました。球の直径が電極間距離に比べて十分大きいデータの値を採用しています(ただしこのデータは一球接地を前提にしています)
平等電界(例えば電極間隔に比較して直径が十分大きい球状電極間)での放電を前提にしています。針状電極であれば放電開始電圧はもっと低くなるはずですが、それについてはまた別に記事にしたいと思います。
「高電圧モジュールの放電開始電圧 - 円筒電極と針状電極」
「高電圧モジュールの放電開始電圧 - 針状電極間の放電」
放電開始電圧は「電極間距離と気体の圧力の積」で決まります。そのためふつうパッシェンの法則を示すグラフは横軸を「電極間距離と気体の圧力の積」とします。これだと電極間距離は換算しないとわからないため、上のグラフは1気圧ということを前提に横軸を距離で表示しています。
放電開始電圧は「電極間距離と気体の圧力の積」で決まることから、圧力を1/10にして電極間距離を10倍にすれば放電開始電圧は変わらない、ということが言えます。
しかし、グラフを見ればわかるように電極間距離を1/10にすれば放電開始電圧が1/10にになるわけではありません。放電開始電圧には最低値があり、そのときの電極間距離より短い電極間距離では、距離が小さくなるほど放電開始電圧が高くなるという現象が生じます。ときどき「1cmで1万Vだから1mmだと1000V」みたいなのを見かけるので念のため書いておきます。
放電開始電圧は電極の材質・表面の状況によっても変わります。上のグラフは目安でしかないので、そのことを頭に入れてお使いください。
下記のグラフは
A =14.6、 B=365、 ln(1+1/γ) = 4.857 ( 平均二次電子数 γ=0.007835 )
として放電開始電圧を算出しています(この係数は距離をcm、気圧をmmHGで表すときに対応したものです)
AとBは 藤田文太郎「放電管」(共立全書) 共立出版, 1954 の値を使っています。また ln(1+1/γ) つまりγの値は最低放電開始電圧が330Vになるような値を算出してそれを使っています。γは入射したイオンの数に対する二次電子放出数の割合で電極の材質や表面の状態に依存しまが、ここでは資料にあるデータから算出したものをそのまま使っています。
最低放電開始電圧のときの電極間距離は上のグラフでは0.01mmくらいですが、藤田文太郎「放電管」(共立全書) 共立出版, 1954 によれば実測値は 0.0075mmのようです。
最近のコメント