(旧記事) 時刻標準のまとめと関連記事一覧
「時刻標準について」
にあります。
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掩蔽の観測のとき正しい時刻を知るにはどうしたらいいかということで調べ始めました。他所様の記事も参考にしたのですがおもしろいことに気づきました。たとえばJJYなどの標準電波について書かれた記事はたくさんあります。ただその精度について触れた記事でも周波数精度についてはすさまじく厳密に検討した記事は多いのに時刻の精度について綿密に検討した記事は意外と少ないです。
おそらく日常では正しい時間間隔や周波数を知りたいというニーズは多くても正しい時刻を知りたいというニーズはあんまりないのでしょう。あるいは時間間隔・周波数に対して要求する正確さのレベルと時刻に対して要求する正確さのレベルは異なっているという方が正しいかもしれません。 周波数に関しては10MHzで数Hz異なっていてさえも問題なようです。時間に関してはスポーツだったら1/100秒あるいはそれ以下の違いが問題になるようです。一方時刻に関しては1秒以下の精度が問題にされることはほとんどないように思えます。つまり世間では秒まであっている時計は正しい時刻を示していると解釈されるようです。
ここで検討しているのは1/100秒あるいは1/1000秒程度の精度で正しい時刻を知るにはどうしたらいいかということです。
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時刻を知るための方法について一覧表にまとめてみました。 一万円以下かその程度で入手できる、趣味の電子工作程度のスキルで作ることができるものに限っています。なによりも正しい秒のタイミングを知ることを重視しています。
結論だけ書いておくと
現実問題として1/1000秒の精度で正しい時刻を知る手段はGPSの1PPS出力以外にはない
です。
手法 | 特徴 | 備考 |
GPS受信モジュール (1PPS出力) |
これまで調べた中ではいちばん正確そうです。 |
GM-316 GE-612T でテスト GM5157 もテスト予定 |
GPS受信モジュール (測位情報) |
測位情報は1PPS出力から十分の数秒遅れて出力されていました。 したがってこれをそのまま使ってしまうと十分の数秒の誤差が発生します。 遅れを補正すればいいようにも見えますが遅れ自体ばらつきがあるようです。 空が見えてさえいればいつでも 一秒以上受信すれば測位情報から年月日・時刻・緯度・経度などを知ることができます。 なお測位情報の示す時刻は直後の1PPSか直前の1PPSかというのがよくわかりません。「ほよほよさん - GPGGAメッセージからUTC Timeを取り出す」のコメント欄にあるように規格では直後の1PPSの時刻だそうですが、GM-316については直前の1PPSの時刻になっているようです。 「GPS受信モジュールあれこれ」 「ほよほよさん - UTC時刻取得ができたGPS」 (記事にはGM-315とありますがこれはGE-315の勘違いだったそうです) 「ほよほよさん - GPGGAメッセージからUTC Timeを取り出す」 「池袋駅南口の天文計算 - GPS測位情報を聞いてみた」 「池袋駅南口の天文計算 - 根性でGPS情報を読んでみた」 |
GM-316でテスト |
(市販の) GPS時計 |
正確なことがウリですが上に書いたように「世間では秒まであっている時計は正しい時刻を示している」とされますから精度を無条件に信じるのは危険で精度チェックをしてから使った方がいいと思います。 こういう例を持ち出すのはよくないかもしれませんがGPSと同期しているはずのiPhoneも常に十分の数秒のずれがあります。おそらく測位情報から時刻を取得しているのでしょう(あるいは十分の数秒のずれであれば問題なしとの仕様?) |
持っていない |
JJY受信機 | 専用の受信機はけっこうなお値段のようですが自分で作れないこともなさそうです。 注意深く作れは千分の1秒程度の精度が確保できると思いますが.... ただ都会じゃ受信状況があんまりよくありません。ちゃんとしたループアンテナとかよほどしっかりしたアンテナを使わないと実用は難しいような気がします。 一分以上受信すると年月日・時刻等を取得することができます。 送信所と受信地点の距離による遅延を考慮する必要があります。 デジタル的な信号処理を行った場合はなにがしかの遅延が発生します。 「JJYの報時信号の送出方法」 「池袋駅南口の天文計算 - JJYを受信したい」 編集 「池袋駅南口の天文計算 - JJYの受信法」 編集 |
そのうち作るかも |
電波時計モジュール | 回路構成が精度の高い時刻を取得できるようにはなっていないようです。百分の数秒の誤差があると思った方がよさそうです。 |
CME6005でテスト |
(市販の) 電波時計 |
これもまた正確さがウリですが上のような電波時計モジュールを使っているのであれば精度はあんまり期待できません。少なくとも百分の数秒の誤差があると思った方がいいと思われます。 | 未検証 |
標準電波 BPM |
電波伝搬に伴う遅延(百分の一秒程度、千分の数秒のばらつきあり)を考慮して使えば千分の一秒に近い精度が得られそうです。 受信機によっては(=DSPを使っている機種など)さらに千分の数秒の遅延が発生しますので注意が必要です。 秒信号はUTC-20msecで送出される時間帯とUT1で送出される時間帯があります。毎分分信号が送出されます。 短波の聞けるラジオがあればいいのでお手軽ですが場所によっては安定した受信が難しいかもしれません。東京だと昼間は15MHzが比較的安定して受信できるのですが肝心の夜になると5MHzが不安定な状態での受信となります。受信状態は場所や季節によって大きく変わってくると思います。 「惑さんのワクワク天体観察日記 - -20º 4606の星食」(BPM報時スケジュール) 「惑さんのワクワク天体観察日記 - 正確な時刻を求めて・・・」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - 正確な時刻を求めて・・・2」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - BPMを星食観測時刻に使用することについての考察」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - 電離層あれこれ」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - 電離層の高さ」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - GPSとBPMの比較データについて考える」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - ラジオの精度を調べる」 「池袋駅南口の天文計算 - GPSとBPM」 「池袋駅南口の天文計算 - 受信機内部の遅延を調べる」 「池袋駅南口の天文計算 - 続・受信機内部の遅延を調べる」 「池袋駅南口の天文計算 - 光の速度が有限であること (1)」 「池袋駅南口の天文計算 - 光の速度が有限であること (2)」 |
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117 | 百分の数秒の遅延があるとされていますが未検証です。 ----- 「惑さんのワクワク天体観察日記 - 固定電話の117とiphone5の117を比較してみる」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - iphoneの117と固定電話の117について考える」 |
できる範囲で検証中 |
スマホの117 | 携帯・スマホ・IP電話だと伝送路や機器内部での遅延がプラスされます。ですので一般には十分の数秒遅延していると言われていますが実測するとSoftbankに関してはどうも秒信号が十分の数秒早めて送出されているようでGPSの時刻と比べると0.1秒程度進んでいました。 |
できる範囲で検証中 |
TEL-JJY (テレホンJJY) |
エコーバックによって測定した遅延時間を補正することによって千分の一秒あるいはそれ以上の精度を出すことができるそうです。 「惑さんのワクワク天体観察日記 - テレホンJJY」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - テレホンJJYにつないでみる Windows編」 「惑さんのワクワク天体観察日記 - テレホンJJYにつないでみるMac編」 「池袋駅南口の天文計算 - テレホンJJY(TEL-JJY)の「秒」の調べ方」 「池袋駅南口の天文計算 - ハンダ付け二題」 「池袋駅南口の天文計算 - IP電話でテレホンJJY」 「池袋駅南口の天文計算 - RS232Cと画面表示を比較する」 ----- 「電話回線による標準時提供(TEL-JJY) - 時刻送出のタイミング等」等 |
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放送波 時報 |
ラジオのNHK第一とかそんなのです。 詳しくは調べていませんが百分の数秒の遅延があるようです。 遅延時間が安定していれば百分の一秒の精度は確保できそうですが.... 「惑さんのワクワク天体観察日記 - NHKの時報とBPMを比べてみた」 「池袋駅南口の天文計算 - JOAKとGPS」 |
できる範囲で検証予定 |
NICTの「日本標準時(JST)表示」 | インターネットを利用したサービスですから精度は期待できないように思われがちですが想像しているより精度はよさそうな気がしてきました。 「池袋駅南口の天文計算 - 意外と正確な「日本標準時表示」」 |
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ロランC (LORAN C) |
GPSと同じく双曲線航法のための施設ですから精度は非常に高いはずです。 でも受信するのがJJYより難しそうです。 受信したからと言ってそれだけで正しい時刻がわかるわけでもありません。 実用的にはともかく趣味的にはおもしろそうなのですがそのうち廃局になりそうです。 ----- 「惑さんのワクワク天体観察日記 - ロランCを受信してみる」 |
機会があれば検証 |
電源周波数 | これは時刻標準ではなく周波数(=時間間隔の)標準として使えないかということですが周波数の管理目標は(かなり古い資料によるものですが)±0.2Hzだそうです(これ以上ずれるとユーザーからクレームが来るらしい) だからあんまり精度はよくないです。 ただ長期間で(積算して)見れば非常に精度がいいという街の噂なので一度それを確かめてみたいものです。 こんな目的には有効に使えます。 「デジカメのセンサー走査時間を測る方法」 |
機会があれば検証 |
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参考
「IOTA2008 月による星食の観測報告書式」における“基準時刻信号”の分類
(「星食観測ハンドブック 2014」による)
記号 | 解説 | 備考 |
G | GPS (1PPS出力を用いる.1PPS出力は,タイムインサータ,LED光,音声信号などの形に変換されて,観測に用いられる.) GPS装置のディスプレイ画面の時刻表示は遅延がある場合があるので,これに含めない. |
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R | ラジオの音声信号 (標準時報) | |
N | ネットワークタイムプロトコル (NTPソフトウエアを用いている場合) | |
C | 時計 (標準時報に合わせてある) | |
T | 電話(固定電話 117)の時報.(携帯電話は遅延があるのでこれに含めない) | |
M | 標準時の信号に関連づけられた媒体. | |
O | GPS のディスプレイ画面に表示された時刻, NTPで補正されていないコンピュータの時計など,精度の低いもの.(携帯電話で聞いた時報もこれに含める.) |
記号は“時刻を測定するのに使用した機材”を意味するものであって掩蔽時刻の決定方法や時刻決定の精度を意味するものではありません。決定方法は“時刻測定と記録の方法”としてまた精度は“時刻精度”として別に報告します。
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