これまであんまりまともじゃない電極を使っていました。
ピンヘッダ
これは秋月他秋葉原に行けばどこでも売っていますが、なんだかよくわかりません。
金メッキニッケルのつもりで使っています。
シャープペンシルの芯
これもどこでも手にはいります。炭素電極のつもりです。
製造法を調べると炭素電極と考えてよさそうですが...
ユニクロ線
百均。これは鉄を亜鉛メッキしさらにクロムでメッキしたもののようです。
サンドペーバーでゴシゴシやって鉄電極のつもりで使っています。
アルミ針金
百均。
アルミ電極として使っているわけですがアルミとは言ってもアルミ合金のようです。
他の金属(おそらく銅)がかなり含まれているような気がします。
(「塩橋(隔壁、液絡)をティッシュで代用してみた - ボルタの電池風電池の起電力」の最後の写真)
一円玉(これは純アルミとされています)を電極にしたい誘惑にかられます。
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ちゃんとした電極と言うとやっぱり白金でしょうか。白金がどういう場合も優れているというわけではなさそうなのは「電気分解に使う電極の選び方」 にも書いたのですが、基準にできるという意味ではやっぱりこれでしょう。
秋葉原に買いにいったら「お取り寄せになります」ということですごすごと帰ってきたわけですが、白金とは別に白金チタン電極というものがあります。
どうも白金とは電気的特性(電気化学的特性)が違うようにも見えるのですが購入してみました。
たぶん白金電極(として使える白金線)も買うことになると思いますが。
白金チタン電極によるテトラトリタ炭酸ナトリウム水溶液の電気分解実験中
「水の電解に必要な電圧が1.23Vであることを検証する (2)」では水の電気分解(正確に書くと鉄電極によるテトラトリタ炭酸ナトリウム水溶液の電解)は1.6Vで起きることは確実なようですが、最低何V必要なのかはよくわかりません。
そこで今回は実験方法を電流を徐々に小さくしながら電圧を測定するという方法から一定電流を流しながら電圧の変化を見るという方法に変えてみました。このときの等価回路を次のように仮定します。
R1は電解液の電気抵抗ですが、テトラトリタ炭酸ナトリウムの濃い水溶液を使っているためこれは小さく数百Ωと思われます(「水の電解に必要な電圧が1.23Vであることを検証する (1)」 にある最後のグラフ右側の曲線の傾きが抵抗値になります)
D1、D4が
2H2O => O2 + 4H+ + 4e-
の反応に要する電圧、D2、D3が
2H2O => H2 + 2OH- + 2e-
の反応に要する電圧を、C1、C2が電気二重層を示しています。
この回路ではまず電気二重層(コンデンサ)の充電が行われ、電流は一定なのでここでは時間に比例して電極間電圧が上がっていくはずです。電圧が電解の始まる電圧に達すると流れている電流の一部が電解電流となりコンデンサの充電に使われる電流は減っていくので電圧の上がり方が鈍くなるはずです。電圧が電解電圧+流れている電流に相当する過電圧に等しくなると電流はすべて電解電流ということになるので電圧は一定になるはずです。
つまり時間経過に対する電極間電圧はこんなグラフになるはずです。
電解電圧から電解電圧+過電圧になるまでのCのところは簡略化してあります。
もしAからCへ移り変わるところの電圧E1が測定できればそれが水の電気分解に必要な電圧ということになります。
1.23Vというのはおそらく標準電極電位から求められた値だと思います。となると実測してそれを求めることができるか疑問にも感じます。
「渡辺正・金村聖志・増田秀樹・渡辺正義 「基礎化学コース 電気化学」 丸善、2001」にあるグラフをながめても電圧計が1.23Vを示すということはなく、電圧・電流の関係を外挿することによって推定するということになりそうです。
前回「水の電解に必要な電圧が1.23Vであることを検証する (1)」では炭素電極でやっていたのですが、今は鉄電極でやっています。鉄電極の場合水の電気分解 - セスキ炭酸ソーダ/炭素電極 低電圧編」 にあるように電圧・電流の関係に不思議な動きがあり炭素電極にしたのですが、炭素電極はさらに不可解な動きを示しているのでまた鉄電極に戻ってきました(近々白金チタン電極でもやってみる予定です)
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今は電流を特定の値から徐々に小さくしながら電圧の変化を測定しているわけですが、電流の開始値、電流の変化率をいろいろ変えながら6ケースほどやって一つのグラフにしてみました。
電気伝導率のことを調べていると必ず“白金黒”というのが出てきます。なぜそういうものが必要なのかというのは「電気二重層キャパシタを作る実験と水の電気伝導率(電気抵抗率)の測定に白金黒を使う理由」 に書いたのですが、とうぜん白金黒をどうやって手に入れたらいいかとかどうやって作るかというのも気になります。
念のために書いておくと白金黒というのは白金の微粉末のことです。
気にはなったのですが、白金黒もその原料もどうせ私が買えるような値段じゃないだろうということで調べたりしませんでした。でも今日検索ワードを見ていたら「白金黒 作り方」というのがありました。やっぱり興味がある方はいらっしゃるようで、私もまたまた気になってきたので調べてみました。
ググったら(下に出てくる塩化白金酸の価格はわからなかったのですが)
塩化白金酸ナトリウム 20%溶液(Na2) (10 ml) 27,756円
というのはありました。きっとこのくらいのお値段なんでしょう。
(「PGI」のオンラインショップにありました)
なお、上の電気伝導率(計)の話は白金黒の表面積が大きいことを利用しているわけですが、触媒としても強力で、白金黒を使った実験の例をあげたものがありましたの紹介しておきます。
「高校化学 触媒作用を実感できる白金の実験開発とその授業 富山県立桜井高等学校 横田淳一/湯沢光男 栃木県宇都宮市立若松原中学校」
水素を吹きかけるだけで発火するとか怖いです。
さらに白金黒というと黒体輻射なんかの話につながりそうですが、今のところ興味がないので省略します。
前回の記事「水の電気分解 - セスキ炭酸ソーダ/炭素電極 低電圧編」 に書いたように
もし水に電解な必要な最低の電圧が存在するのであれば電圧を徐々に下げて行けばある電圧で電流が流れなくなるはず
ということで実験したのですが、かなりヘンな結果になりました。実験手順に問題があるのか確認するためにもう一度ほぼ同じ条件で再度実験してみました。
(電解液はテトラトリタ炭酸ナトリウム水溶液で前回のものをそのまま使っています。電極は両方とも炭素(シャープペンシルの芯)でこれも同じものです)
青い線が電圧で約1.6Vからほぼ0Vまで5時間ほどかけて下げて行きます。赤い線は電流ですが、やっぱり途中で枝分かれしてしまいます。
今回は動きがよくわかるように電圧・電流のグラフは点ではなく線でプロットしてみました。
1.04Vあたりで電流がはげしく変動し始めます。ただランダムに変化するのではなく特定の二つの電圧の間をいったり来たりしています。上側の線と下側の線を比べると上側の方が濃いので1.04Vになると突然電流が増え、たまに低電流になる状態が続くと見たほうがいいようです。
1.04Vになると電圧・電流の関係に変化が起きるわけですから、この電圧でなんらかの現象が起きているのは確かでしょう。例えば電気分解が止まるとか...
もっともこの電圧は前回の結果1.3Vとは違っています。
ググると水の電気分解について書かれたものはいろいろあるのですが、次の二種類をよく目にします。
1. 水の電気分解についての理屈の説明
2. 水の電気分解はどういう条件で行うべきかの検討
前者は生徒(あるいは受験生)向けのようで、必ず、水の電気分解すれば酸素と水素が1対2で発生する、ということが書いてあります。
後者は化学の先生向けのものだと思いますが、水を電気分解したとき発生する酸素と水素の体積が1対2にするにはどういう条件で実験したらいいか、というようなことが書いてあります。つまり、1.の理屈を実験で納得させるにはどうしたらいいか、ということでしょう。
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私がそういうのを書いてもぜんぜん意味がないと思うのでちょっと斜めの方向からやってみたいと思います。例えば酸素と水素が1対2で発生しないとすればそれはどういう理由によるものか徹底的に検証するとか。
今回は 「水の電気分解 - ほんとうに1.23V必要なのか?」 の続きで1V~2V程度の電圧をかけて電気分解の始まる電圧というのを特定できるものなのかやってみようという試みです。
前回とは実験方法を少し変えてみました。
電解液はテトラトリタ炭酸ナトリウム水溶液でこれは変わらないのですが、電極はシャープペンシルの芯にしました。芯の製法からすると炭素電極と考えていいように思えます。
それから前回は電流を変化させて電極間電圧を測るという方法を採ったのですが、今回は電極間電圧を変化させて電流を測るという方法にしました。そして電圧は極力変化率を小さくするようにしました。前回の実験で(特に電流が小さいとき)定常状態(平衡)に達するのにとんでもなく時間がかかったのでできるだけ定常状態(に近い状態)を維持しようと思ったからです。
Rxが“電気分解装置”です。それに印加する電圧はオペアンプ(積分回路)で作っています。今回は電圧の変化率は -0.00005V/sくらいにしてあります。だから一回の実験に10時間かかります。
Rは1kΩで始めたのですが、流れる電流が10μAのオーダーになったので途中で100kΩに変えました。Rをダイオードにして対数圧縮してもいいのですが、特性をちゃんと調べたダイオードがなく抵抗を取り替えることにしました。
受験勉強用だったら、こういうのはきちんとわかりやすくまとめられている方がいらっしゃいます。いろいろあるのですが、例えば
「Chembase - 電気分解」
があります(もうひとつわかりやすいものがあったような気がするのですが見つけられなくて...)
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この記事は“趣味の化学実験用”です。理屈じゃ(教科書じゃ)上のリンク先みたいなことらしいですが、教科書の知識だけで実際にやってみるとあんまりうまく行かないことがあり、ある程度“実用性“を考えています。
教科書に書いてあるようにはうまくいかない例としては次のようなのがあるようです。
1. 水を電気分解したけれど酸素と水素の体積比が1対2にならない。
2. 食塩水を電気分解したら陽極から出る気体に酸素が混じっている。
(これは実験がうまくいかないというより、酸素が混じってあたりまえみたいです)
最近思うのですが、(電気)化学の記事というのは天文や電子工作のような趣味の目的ではなく学習用途(?)みたいです。だからそれが正しいか(実際に起きる現象か)ということより教科書と合っているかということの方が重視されるみたいです。
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以下(内容に実験などによる裏付けがあると思われる)ネット情報や書籍から引用したものですが、なかには上の1.や2.のようなものが混じっているかもしれません。だから鵜呑みにはしないでください。
なお1.は水素は出てくるが酸素が思うように発生しないというのが多いようですが、私は純水の電解で酸素は出てくるのに水素がぜんぜん発生していないように見えるというのを経験したことがあります。
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テトラトリタ炭酸ナトリウム水溶液の電解
(問題なさそうな例、過電圧も低めです)
よく見ると酸素の“出”が少ないような気がしないでもありません。捕集して容積を測ってみないとなんとも言えませんが...
「放送大学 濱田研究室 - 物質の化学 反応と物性」 や 渡辺正・金村聖志・増田秀樹・渡辺正義 「基礎化学コース 電気化学」 丸善、2001 によれば電気分解は次のように考えるとよいようです。
1. 電解液の部分はイオンの移動(あるいはイオンによる電荷のバケツリレー)によって電気を伝えることができる。その電気伝導度はイオンの種類やイオン濃度に依存する。
2. 電極で電子の授受反応が起きると電流が流れるが、反応を起こすのにエネルギーが必要である。
交流の場合は(電極の周囲にできる電気二重層があるので)2.をパスして1.だけで電気を通すことができるので低い電圧でも電圧に応じた電流が流れてしまうのですが、直流の場合は2.があるので必ず反応を起こすのに十分なエネルギー(電圧)がいることになります。
この電圧は水の場合1.23Vとされています。ほんとうに1.23V以下では(電気二重層の充放電電流以外の)電流は流れないのか確かめてみました。
電気分解では2.の電圧以外に1.で発生する電圧降下や過電圧があります。電圧降下や過電圧は電流に依存するので、実験のやり方は一定の電流が流れるように電圧をかけ、電流を徐々に小さくしていく方法をとります(要するに定電流源を使って水を電解します。回路は「鉄電極の水素過電圧+酸素過電圧を測ってみた - 水の電気分解」に書いたものを使います)
この方法だと電流を小さくしていくと電圧降下や過電圧の影響も小さくなり電極間電圧は下がっていくはずですが、いくら小さくしても電極間電圧が1.23Vを下回ることはないということになります。
結果
0.35mA/cm^2から徐々に電流を小さくしていくというのを2回繰り返しています。どちらも最後は1/2000くらいの電流にしているのですが、あんまり電圧は変化しません。確かに限界の電圧というのが存在するようです。
水を電解するのに必要な電圧といったとき、水の電解が始まって電流が流れ始める電圧と電解の結果発生する気泡が目に見えるだけの電流が流せる電圧、というのがあります。
希硫酸などの電解液を電解する場合はこれらの電圧は主に何を電極に使うかで決まりますし、電圧値はそれほど変わりません。
一方電解質をあんまり含まない場合、この二つの電圧の意味はまったく異なるものになります。この二つの電圧値も数百V(あるいはそれ以上)違っていたりします。
電解質をほとんど含まない場合電解が始まる電圧はイオン濃度に強く依存し、気泡が見える電圧というのはそれに加えて電極の形状や間隔も関係してきます。
だから単に“純水は○○V”で電解できる、ということは言えません。これらのことを前提に読んでいただければと思います。
この記事ではまず純水の電気分解が始まる電圧についてざっと検討し、次に特定の条件で電解による気泡の発生が認められるようになる電圧を具体的に算出してみたいと思います。
とうぜん次の記事では実際にその電圧で気泡が出てくるのが確認できるか確かめる予定です(「純水(精製水)を電気分解してみた」、「純水の電気分解に必要な電圧は20V!?」)
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水の電気分解に必要な電圧は1.23V以上とされています。電圧を上げて行って電流が流ればそこが電気分解に必要な電圧なわけですが、実際には電極から気泡が出てこないと電気分解しているという実感はわかないと思います。
かろうじて気泡の発生がわかるのは電流密度が1mA/cm-2(約0.01ml/cm2/minに相当)くらいになってからだそうです。これには電気分解が始まるところよりもうちょっと電圧が必要です。希硫酸だと2Vくらいになるとこの状態になるようです(硫酸・希硫酸は入手が困難なので希硫酸の電解実験はしていません。希硫酸だったら(バッテリーを買って電解液だけ使う、というようなことをしなくても)入手できないこともないようなのでそのうち試してみるつもりです。)
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上の1.23Vというのは水の( 2 < pH < 12 の状況下で起きる)
2H2O => O2 + 4H+ + 4e-
2H2O => H2 + 2OH- + 2e-
の(電気)化学反応を起こすために必要な電圧です。
希硫酸だろうが水道水だろうが、また純水だろうが超純水だろうが起きる反応は上と同じはずですから(気泡が見える見えないは別として)どれも1.23V以上であれば電気分解が起きそうなものです。でも実際にはかなり違うようです。
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なおこの記事は主に
渡辺正・金村聖志・増田秀樹・渡辺正義
「基礎化学コース 電気化学」 丸善、2001
を参考にして書いています。私は電気化学の専門家でもないし、勉強したこともないのですが、この本はあんまり予備知識がなくても読めて、かつ直感的に理解しやすい(つまりわかった気になれる)本です。天文計算における「長沢工「天体の位置計算」地人書館」 と同じくらいにおすすめの書籍です。
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現在想定している電気分解や電池の電気的等価回路
これは本を読んだりネットで調べたりたことをもとに想像をたくましくして作った図です。
電気二重層のところにあるコンデンサは実測してみると異常に大きい静電容量を示し、コンデンサーとしての極板の間隔=電気二重層の厚みが極小であることを示唆していますが、実際電解液の中だと電気二重層の厚みは1nm程度(水の分子三つ分)しかないそうです。
中間に抵抗がありますが、水の(電解液の)電気伝導率(電気抵抗率)というのはこれを測定した結果と電極の面積・間隔から算出したものです。
電気二重層のところにあるダイオード(pn接合)は電気二重層で電解が起きたときの電圧電流特性を表現するためのものですが、電気二重層の電圧電流特性はpn接合の電圧電流特性にとても良く似ています。
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