フラウンホーファー線にD3線が見当たらない理由
「太陽光のフラウンホーファー線(575nm~595nm)」より
参考
「D3線はいずこ? - 簡易分光器の限界に挑む」
「フラウンホーファー線の詳細リストとD3線が存在しないこと」
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簡易分光器だから、とも考えるのですがD1、D2線の周囲には(そしてD1、D2線の間にさえも)暗線はたくさんあるのに“有名な”D3が写っていないというのは不思議です。
このことについては上にリンクしたように二回ほど記事にしたのですが、最近やっと理由がわかりました。結論だけ先に書くと(太陽光のスペクトルに見られる暗線がフラウンホーファー線の定義だとすれば)単に
フラウンホーファー線にD3線は存在しない
というだけの話でした。以下このことについて詳しく書きます
まず、なぜフラウンホーファー線の中にD3線があると思った(思い込んでしまった)か、ということから書きます。
じつは「フラウンホーファー線にD3線が存在する」とする書物やネット情報(例えばWikipedia)が相当数存在します(「Wikipedia - フラウンホーファー線」 に関しては6月9日編集しました)
一例を上げればこういうのがあります。
太陽の光はほぼ連続スペクトルであるが、ところどころに鋭い暗線(吸収線)がある。この暗線をフラウンホーファー線(Fraunhofer Line)という。この中に、当時まだ知られていなかった元素の吸収線があった。のちにこのことからギリシャ語の太陽(ヘリオス Helios)をもとにして命名されたのがヘリウムである。ヘリウムは地球上に存在しないと思われていたが、後になって地球上でも発見された。
(小暮陽三「なっとくする演習・量子力学」 講談社 2000年)
この文章は「ボーア・ゾンマーフェルトの量子条件」の説明のところにある余談・おまけみたいなものなんですが、分光器に一生懸命になっている私みたいな人間がここを読むと、ああD3線ってフラウンホーファー線なんだと思ってしまうことになります。
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